音楽ライブ生配信もスタート…いま旬の「dTVターミナル」を試す

エンターテインメント 映画・ドラマ・映像作品
7月23日に配信されたdTV初の音楽ライブを視聴した
  • 7月23日に配信されたdTV初の音楽ライブを視聴した
  • dTVのコンテンツが大画面テレビでも視聴可能になるdTVターミナル
  • 背面にHDMIや光音声出力端子を搭載。様々なホームシアター機器に接続ができる
  • 電源はUSB変換アダプターが使える
  • 操作性の高いリモコン。本体は薄く軽量だ
  • dTVターミナルをインターネットとテレビにつないでから、あらかじめ登録したdocomo IDとパスワードを入力
  • docomo IDの取得とdTVの会員登録が必要だ
  • トップのイチオシ動画のメニューには予告編の動画が流れる

 Netflix(ネットフリックス)の日本上陸が9月2日に決まり、国内の定額制動画配信(SVOD)の“元年”がいよいよ訪れそうな気運が盛り上がっている。なかでも、エイベックスとNTTドコモがパートナーを組んで提供する定額制動画配信サービス「dTV」は、このほど音楽チャンネルを拡充。音楽ライブの生配信を開始した。

 今回は、7月23日に放映された「AAA(トリプル・エー)」のアリーナツアーファイナル公演の視聴レポートとともに、dTVのサービスが大画面テレビでも楽しめる専用アダプター「dTVターミナル」のハンドリングを紹介したい。

■今春からスタートした「dTV」の特徴とは

 はじめに、今年の4月22日から本格始動したdTVの概略を述べておこう。dTVは従来、エイベックス通信とNTTドコモがdマーケットのプラットフォーム上で提供してきた「dビデオ powered by BeeTV」からリニューアルした動画配信サービスである。2015年6月末時点でのdTVの登録会員数は450万人を数えるという。

 ユーザーは月額500円(税別)の利用料金で、約12万作品のコンテンツを“見放題”で楽しめるところが特徴になる。アーカイブには、dTVオリジナル制作の作品を含めて、国内海外の映画やドラマ、アニメ、ミュージックビデオなどが揃う。

 視聴はパソコンやスマホ・タブレットのほかに、薄型テレビにHDMIで接続してdTVのプログラムが視聴できるようになる専用アダプター「dTVターミナル」でも可能で、1アカウントでマルチデバイス連携視聴ができることも特徴。dTVターミナルの価格は6,980円(税別)だ。

 サービスがdTVに刷新されてから、コンテンツ視聴のユーザーインターフェースも大幅に変わっている。その特徴を最も表しているのが「ザッピングUI」と呼ばれるものだ。

 リビングで放送波のテレビ番組を見るときには、テレビをつけたばかり、あるいは番組の合間のタイミングなどに「何か面白い番組がやってないかな」と、チャンネルをランダムに切り替えて(ザッピングしながら)見る感覚が一般的ではないだろうか。

 地上デジタルのテレビ番組は基本無料で見られるうえ、ほぼ365日・24時間休みなく番組表に沿ってテレビが放送されている日本に暮している人が味わえる特権だ。

 対する動画配信サービスの場合、いままではユーザーが見たい動画を主体的に検索して再生する楽しみ方が中心だったが、dTVでは約12万のアーカイブからユーザーが検索の手間をかけなくても、面白そうなコンテンツをスムーズに見つけられる使い方を探求して、この「ザッピングUI」というインターフェースに仕上げて組み込んだというわけだ。

 さらにIBMと共同開発したという、レコメンドエンジン「あなたにオススメ」の機能では、ユーザーの過去の視聴履歴や視聴時間、性別・年代などの情報を独自のアルゴリズムによって解析することで、ザッピングUIと合わせてユーザーが興味を持ちそうな番組を自動でプッシュ。常時dTVを楽しみたくなる仕掛けを盛り込んでいる。

■dTVが誇るユーザーインターフェースは本当に使いやすいのか?

 体験レポートに入る前に、まずdTVはどうすれば見られるのか復習しておこう。dTVは会員制サービスなので、まずは公式サイトでユーザー登録を行う。本稿執筆時点では初月の利用料金500円(税別)が無料になる「初回31日間無料登録キャンペーン」も実施されているので、手元にdTVターミナルが無くても、まずはスマホやタブレットでdTVの充実ぶりをチェックしてみるのもありだ。

 NTTドコモの回線契約があるユーザーで、既にdocomo IDを持っていれば登録はスムーズにできるが、NTTドコモ以外のユーザーであっても、dTVはマルチキャリア対応のサービスなので利用は可能だ。docomo IDを新規に発行してからdTVのユーザー登録へと進む。なお、NTTドコモのユーザーならキャリア課金による決済が利用できるが、ドコモ以外のユーザーはクレジットカードが必要だ。

 今回はdTVターミナルの使い勝手を中心に紹介しよう。まずは本体をHDMIケーブルでテレビにつないで、テレビの入力をHDMIソースに切り替える。続いてdTVターミナルをホームネットワークにつなぐためのセットアップだ。

 ターミナルは無線/有線でインターネットにつなげるので、接続が完了したら画面に表示されるインストラクションに従ってdocomo IDとパスワードを入力すればdTVの画面が立ち上がる。

 トップの画面が「イチオシ動画」と呼ばれるメニューになり、dTVに収録されているコンテンツからおすすめ作品の予告編がここで視聴できる。映画館に出かけると、本編が始まる前に近日公開作品の予告が流れると思うが、まさにあれに近い感覚だ。映画やドラマの見所をかいつまんでチェックができるので、知らなかった作品に対する興味も自然と湧いてくる。

 予告編から視聴を選択すれば、大抵の作品はそのまま本編を見始めることができる。予告編のコンテンツは時間ごとに切り替わるので、dTVターミナルの電源をオンにするたび、いつも新鮮な番組と出会えるのがポイントだ。

 ひとつコメントを付け加えておくと、dTVターミナルに付属するリモコンの操作性は快適だった。ボタンの配置がシンプルにまとまっていて、「ホーム」を押せばコンテンツ一覧に移動。十字キーで見たい作品のサムネールを移動して、決定で選択といった具合に必要十分な操作メニューへ最短経路で辿り着ける。再生、メニュー、検索などのファンクションボタンが別途配置されているのも便利だ。

 一つ注文があるとすれば、コンテンツ再生時の早送り・早戻しがdTVターミナルでは若干使いづらかった。操作が十字キーの左右に割り当てられていて、3倍速送りなどもできるのだが、早送りされている状態の映像が画面に表示されないので意図したポイントを見つけるのに、シークバーに表示される時間表示しか頼りがない。

 アプリ版ではシークバーの上に映像のサムネイルが表示されるので、同様の使い方ができると操作性が向上するのではないだろうか。

■約12万作品を揃えるアーカイブの充実度をチェック

 「コンテンツ一覧」には、dTVでオンデマンド再生ができる約12万の作品が勢揃いしている。作品の種類は映画、テレビ、オリジナルコンテンツの「BeeTV」などに分かれていて、それぞれに現在の収録タイトル数がカッコの中に数字で表示されている。

 例えば本稿執筆時点で、映画は「3,798」、テレビは「1,411」、ミュージックは「75,433」もの作品が並んでいた。映画は比較的マニアックなヨーロッパの作品なども揃っていて、BDやDVDで見つけにくいものもある。コンテンツは量、内容ともに充実していると感じた。

 新作映画など注目作品を中心に都度課金制配信(TVOD)の「レンタル」作品も揃っている。視聴料金は作品によって異なるが、多くの話題作は標準画質が400円、HD画質は500円が目安だ。視聴期限は決済完了後30日までで、再生後48時間以内に見終わらなければならない。作品数は本稿執筆時点で892本揃っていた。

 アニメに関してはグッとくる最新作もコンテンツ一覧に並んでいるので、さっそく見てみようとしたら「dアニメストア」の契約が別途必要なタイトルだった。dTVターミナルの場合はdTVとdアニメストアで配信されている動画作品が、コンテンツ一覧に一緒に並んでいるからだ。

 dTVターミナルの強みは、dTVのコンテンツをテレビで見られるようになるだけでなく、PCやモバイルアプリの「dTV」とdocomo IDでひも付けることによって視聴連携ができるところにもある。移動中にスマホで見ていた作品は、帰宅してからテレビをつけてdTVターミナルで続きを見ることもできる。

 いままでリビングのテレビでは放送中の生番組や、録画機に録画した番組、BD/DVDなどパッケージ作品を見るのが相場だったが、動画配信サービスの登場により、購入、またはレンタルして手元にある作品以外のコンテンツであったり、録画機に録画されていない番組であっても手軽に楽しめる機会が広がるのは確かだろう。

 テレビ番組をザッピングしながら見る感覚に近づけながらも、従来のテレビを楽しむ枠組みの中では語りきれない新鮮な体験が味わえるのがdTVの醍醐味だといえる。

■「AAAアリーナツアーファイナル公演」の生配信を視聴してみた

 今回は都内エイベックス・デジタルの会議室にて、dTVで7月23日に生配信された「AAAアリーナツアーファイナル公演」を視聴させてもらった。なおdTVのライブ配信を視聴するためには、dTVターミナルに7月22日から提供されている最新版のファームウェアを入れておく必要がある。

 いま若年層を中心に高い人気を誇るAAAが全国8都市で公演を実施してきたアリーナツアーは、約15万人の観客を動員。大型公演のファイナルを生配信するという試みは、dTVを展開するエイベックスとNTTドコモにとって初の試みだった。会場で撮影、リアルタイムエンコードされた動画はdTVのサーバーを経由してユーザーの端末へ配信される仕組みだ。

 会場にはアーティストの躍動をピンポイントで抑えるため、複数のカメラをマルチアングルで配置。配信される映像は1080Pの高精細なHD画質なので、色彩感が豊かで、細部のディティールもよく出ていたし、アーティストの表情が細かく移り変わる様子も逃さず捉えることができた。

 映像のコンディションについては、ユーザーがdTVターミナルを設置している通信環境にもよってくるのだが、今回筆者が視聴した環境では大きなノイズが表れたり、ネットワークの混信による遅延が発生することはなかった。

 幸いサーバー側のトラブルによる大きな配信エラーが発生することもなく、ライブの興奮をありのままに伝える初の生配信プロジェクトは成功裏に終わったと言えるのではないだろうか。

 番組に使われた映像は、生配信専用のオリジナル映像なので、ファンにとってはプレミアム感の高い体験になることは間違いない。この迫力が自宅の大画面テレビで味わえるなら、テレビにdTVターミナルをセットにして待ち構えた甲斐があるというもの。これにサラウンド対応のサウンドバーを加えれば、さらに環境がよくなると思う。

 今回の番組を視聴して、動画配信サービスによる生配信のポテンシャルの大きさを感じた次第だ。ライブにスケジュールが合わなかった、あるいは残念ながらチケットが取れなかったというファンには、ありがたいサービスになると思う。

 リアルのライブと違って、映像を見ながらスマホを片手にTwitterなどSNSで、ファンどうし一緒に盛り上がるという楽しみ方もできるはずだ。生配信のコンテンツを一部編集して、一定期間後にリピート放送する計画もあるようだ。

 ファンには、dTVに登録する大きなモチベーションになるだろう。dTVのビジネス戦略にも関わってくるので、簡単には実現できないことなのかもしれないが、人気アーティストの生配信については一定数のファンを集めてパブリックビューイングを開催してみても面白いかもしれない。

■日本の生活にフィットした動画配信サービスの強みが活かせるか

 dTVでは今後、同様の音楽ライブ生配信についてエイベックス所属の人気アーティストが勢揃いする「a-nation stadium fes.」でも実施することが決定されている。8月22日・23日の大阪公演、29日・30日の東京公演で、浜崎あゆみやBIGBANG、SUPER JUNIORや三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEなどが登場するという。

 生配信のほかにも、dTVでは映画「進撃の巨人」の公開にシンクロして、8月にはdTVオリジナル制作のスピンオフドラマを公開する。スマホ・タブレット、PCで視聴できるコンテンツとして、dTVでは映画「新宿スワン」を全6話に分割して配信するという試みにもチャレンジしている。

 都市生活者にとっては、通勤・通学の移動中にも映画を楽しむ一つのスタイルとして定番化するかもしれない。こうした日本国内の動画配信事業者らしく、日本人のライフスタイルにフィットしたサービスを提供できるところが、dTVならではだろう。その特長がライバルとなるNetflixやHuluとの競争の中でどのように活きてくるのか。これからも楽しみだ。

音楽ライブ生配信がスタート、テレビで視聴できる「dTVターミナル」をレビューしてみた

《山本 敦@RBB TODAY》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集