日本一周達成のサイクリストが選ぶ、絶景ポイント&おすすめグルメ

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絶景ベスト1に輝いた北海道上士幌町のタウシュベツ川橋梁
  • 絶景ベスト1に輝いた北海道上士幌町のタウシュベツ川橋梁
  • 3月2日にスタートした際(左)と、7月29日にゴールした際(右)の姿を比較。5kg減量したことは、この写真ではわからない
  • 原爆によって吹き飛ばされた山王神社の二の鳥居。奇跡的に一本だけが残った
  • フェリーが到着した大間では、閉店時間ギリギリにマグロ三色丼を食す
  • 糸魚川のブラック焼きそばは、麺にイカスミをからめている
  • 岩手県宮古市田老地区の仮設住宅や店舗。4年を経ても、まだ半分程度が埋まっている
  • 道路の整備や建物の基礎部分の盛土がようやく終わったところで、建てるのはこれから

5月21日公開の当コラムで、定年を機に自転車での日本一周を始めた西尾英明さんについて紹介しました。その時点で行程の半分を終えていた彼が、自宅に無事帰着との報。僕の質問に答える形で、150日におよんだ旅のあらましを語ってもらいました。

---:まず、日本一周の概要を教えてください。

西尾英明さん(以下、西尾):3月2日にスタートし、7月29日にゴールしました。そのうち自転車に乗らなかった日が5日。総走行距離は1万1258kmでしたから、1日平均77.6km(最長は122km、最短は3km)となります。

1日80km~90kmという目標には、わずかにおよびませんでした。66kgあった体重は、61kgと5kgの減量に成功。費用は1日7000円が目安となり、キャンプをした日は4000円以内に収まりました。総額で100万円強といったところです。パンクは5回。それ以外にスローパンクも3回ありましたが、まあ許容範囲でしょう。タイヤは1度、街の自転車屋さんでママチャリ用に交換しました。
---:訪れる価値があった場所、逆にがっかりした場所は?

西尾:北海道上士幌町にあるタウシュベツ川橋梁です。旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋で、夏季には湖水に沈む幻の橋と呼ばれています。ちなみ絶景ベスト5は以下、長崎県長崎市の軍艦島(端島)、熊本県山都町の通潤橋の放水シーン、大分県臼杵市の臼杵磨崖仏、宮崎県串間市の都井岬にいた野生の馬たちとなります。

ベスト1以外は、すべて九州ですね。印象に残った場所ベスト5は、長崎市の山王神社にある一本柱鳥居、愛媛県愛南町の紫電改展示館、鹿児島県南九州市の知覧特攻平和会館、岩手県宮古市田老地区の仮設住宅や店舗、京都府舞鶴市の舞鶴引揚記念館となります。こちらは戦争関連の施設が大半です。
がっかりしたのは、日本最北端となる北海道稚内市の宗谷岬。訪れた当日は天候が悪く、何も見えず歩けずという状態でしたから、責任のすべてを押し付けるわけにはいきませんけども。

---:旅行中に食べたもので最もおいしかったものはなんでしょうか?

西尾:大間の大トロ、高知のカツオの塩たたき、久慈の生ウニ丼、能登漁火ユースホステルで出された朝獲れのイカ刺し、兵庫の明石焼き…いずれも甲乙つけがたい味でした。予算が限られていますからB級グルメを食べる機会も多く、なかでも長崎のトルコライスや糸魚川のブラック焼きそば、根室のエスカロップがおいしかったです。
---:走行前に想像していたことと実際とで、大きく異なっていたのは?

西尾:震災の被害を受けた三陸海岸の復興です。もっと進んでいると思っていたのですが…。現地の人の話では、道路の整備や建物の基礎部分の盛土がようやく終わったところで、建てるのはこれからとのことでした。国道はダンプカーや大型車が多く、自転車で走るのが怖いので、釜石から予定を変更して遠野へと抜けました。

【日本一周挑戦の西尾英明さんが帰着…あらましを聞いてみた 続く】

---:多くの人に会ったなかで、印象に残っている人は?

西尾:青森県内を移動中、宿泊予定のキャンプ場が閉鎖していることが判明。18時前に20km先にある鯵ヶ沢駅前の旅館に電話し、宿泊を頼み込みました。宿に着いたのは19時過ぎでしたが快く迎えてくれ、素泊まりだったのに風呂上がりのビールにはたっぷりの漬物を。さらに翌朝にはおにぎりまで作ってくれました。最後は近所の人たちと一緒に見送り。旅先での親切は心に残ります。

北海道のライダーハウスで出会った、徒歩旅の夫婦も印象的でした。登山をしながらの旅で、手作りのキャリングカーにテントその他の荷物を載せ、前夜は野宿したとのこと。ふたりとも飄々としたたたずまいで、奥さんも大変な感じをおくびにも出さず、旅を楽しんでいました。
---:落車したことはありましたか。

西尾:立ちゴケに近い状態でしたが、2回ありました。フロントバッグが重く、バランスを崩して転倒したというものです。特に夕張駅前での転倒はヒザ頭を強く打って歩けない状態となり、骨折したものと。腫れや痛みが翌日まで残れば医者に行くつもりでしたが、痛みは残ったものの大きな腫れはなく、自転車には乗れる状態でしたので助かりました。

---:日本一周中に心がけたことで、これは大事だと改めて思うことは?

西尾:やはり健康の維持ですね。幸いにも病気になることはありませんでしたが、ノドの痛みや寒気がすると、早めに薬を飲んで床に就くようにしました。それから野菜も意識的に摂取するように。自転車も足まわりのチェックは欠かしませんでした。

それから電話や地図、写真、SNSや情報収集などにスマートフォンが大きな役目を果たしました。そして道中においても、Facebookで多くの励ましをもらって勇気づけられ、何人もの友人ができました。
---:これはこうすべきだったという反省点はありますか?

西尾:電源対策としてソーラーパネル&充電器を持っていったんですが、PCにもバッテリーがあるので、もっと小型のもので十分でした。逆に雨対策として靴やスマートフォンのカバーがあればよかったなど、持ち物のチェックはもっとしっかりやるべきでした。

---:これから日本一周に挑戦する人に対するアドバイスをお願いします。

西尾:自転車旅の若い人で、訪れた先々でアルバイトや長居をしてる人を何人も見かけました。のんびり回っている人や逆の人、行き当たりばったりの人など、旅のスタイルはそれぞれ。この点で特にアドバイスすることはありませんが、自転車に関する知識の低さが気になりました。

変速機やワイヤーの調整ができず、おかしいと言いながら走っている人、チェーンやギアが汚れ放題の人、工具や修理キットを持っていない人など。やはり万が一を想定し、自分で対処できる最低限の知識や技能を習得してから旅に出るべきだと思います。

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いかがでしたでしょうか? 旅と自転車に関する最低限の知識と技能を備えさえすれば、日本一周がけっして越えられない壁でないことがわかっていただけたかと思います。自由になる時間(150日)とお金(100万円)を用意して、いざ日本一周の旅へ。そこにはかけがえのない何かが待っているでしょう。

【澤田裕のさいくるくるりん】日本一周挑戦の西尾英明さんが帰着…あらましを聞いてみた

《澤田裕@CycleStyle》

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