【川崎大輔の流通大陸】新車販売ラッシュのミャンマー、中古車流通への影響は

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ヤンゴンの市内の渋滞
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◆外資企業による輸入新車販売に認可

2015年5月に商業省が外資企業に輸入新車販売を認める通達を発表した。これまで日系自動車企業は、ミャンマー現地企業と提携を行い委託販売としてショールームでの新車販売を行ってきた。これからは合弁会社を設立することによって、外国企業自ら輸入新車販売が可能となった。

最近、ミャンマーで特に目を引くのが新車ショールームの開業ラッシュだ。昨年からトヨタやGMなどの主要ブランドが一気に開業している。日本やタイなどから左ハンドル車を輸入して現地で販売をおこなっているのだ。2015年7月に訪問したヤンゴンで聞いた話では、某大手商社も日本人を送り込み日系メーカーの新車ディーラー設立のプロジェクトを加速、更に、現時点ではミャンマーに正式な営業拠点設立を発表していない日系メーカーも、ヤンゴンでの新車ディーラー設立の検討を始めている。


◆中古車天国のミャンマー

直近のミャンマーにおける自動車保有台数は直近で累計約60万台と言われている。ミャンマーには中古車関連の公的な統計データがないため正確な数字はわかっていないが、全体の9割以上を中古車が占める。つまり、54万台以上が中古車というわけだ。2011年の民政移管の際に政府が「完成車輸入の解禁」を行った結果、日本の中古車の輸入が急増した。ここ3年ほどで倍増したと言われる。

一般的に中古車の輸入を認可すると中古車が新車販売を圧迫する。そのような配慮から、他(ほか)アジア諸国であればタイやインドネシアでは中古車輸入は原則禁止となっている。また中古車輸入が可能なマレーシアであってもAPという輸入許可証を業者に発行して数量規制を課している。ミャンマーでは日本からの中古車が保有台数のほとんどを賄う歪(いびつ)な市場と言える。言い換えればミャンマーは中古車の天国なのである。


◆新車購入者は高所得層

2014年の実際の日本からの中古車輸入台数は約18万台(乗用車12万台、商用車6万台)と言われている。一方でミャンマー国内の新車販売台数はまだ2000台(2014年)ほどである。現地の自動車メディアは、新車と中古車はターゲットが異なると指摘する。新車は上流2%ほどが購入し、中古車は中流~中流以下の人々が購入している。

確かに、新車の輸入関税が中古車より割高なこともあり、同じ車種の新車と3年落ちの中古車の価格差が2倍以上に開くこともある。徐々に値段が下がってきているがまだ自動車関連の税金は高く、新車に手が出ないのが現状ではないだろうか。現地のディーラー経営者からは、「住民税などがなく自動車以外の政府の税収がないため、払える人からしっかりと税収を取る仕組みにならざるを得ないのだろう」という話を聞いた。


◆新車販売による中古車流通市場への影響は限定的

ミャンマーの最大都市ヤンゴンでは、新車販売のショールームの開業ラッシュにより、本格的な新車販売がスタートした。実際に7月にヤンゴンの新車ディーラーを訪問し新車市場の課題や問題点を聞き出した結果、新車販売による中古車流通市場への影響は軽微であると感じた。理由として1つに顧客ターゲットが異なっている、2つに新車は売れていない、という点があげられる。現在の新車販売台数が月間20台ほどの某大手日系メーカーの新車ディーラーでは「今後の市場拡大の可能性については不透明、現地での生産などはとんでもない状況である」との話を聞いた。現場感覚では新車市場は危機的な状況なのだろう。


◆中古車流通市場で考慮すべき右ハンドル規制

一方で、2018年以降の右ハンドル規制による中古車流通市場への影響は考慮しておく必要がある。英国文化に対抗し右車線であるにも関わらず、信頼性と品質が高い日本からの右ハンドル輸入中古車が市場の9割以上を占めている現状である。それにもかかわらず現在ミャンマー政府から右ハンドル中古車の輸入規制強化が打ち出されている。2018年からミャンマーで走れる自動車は左ハンドルのみにしようと政府が動いている。背景には、新車メーカーからの圧力、更には交通事故多発や交通渋滞が深刻であり環境的な面からの圧力がある。逆に中古輸出業車は、この規制を排除しようと強い圧力をかけている。しかし多くの利権が絡み行方は不明だ。

2015年7月10日に自動車利権絡みの大規模な輸入不正の記事が出た。SSS(スーパーセブンスター)社はミャンマー投資委員会に対して、国内で韓国KIA(起亜)ブランドの車を組み立て、製造すると申請。しかし実際はタイヤだけ外した完成車を3年間輸入し免税を得ていたことが判明した。

ヤンゴン市内で中古車ディーラーを5店舗経営するミャンマー人経営者は、「政府関係者による内部の話し合いでは、右ハンドル規制の2018年の施行は決定している。現在の新車ディーラーは薄利で販売台数も少ない。しかし3年後にはしっかりと利益が取れると信じて今は歯を食いしばってやっている。」と言う。確かに左ハンドルにシフトしないと新車は売れないだろうというのが正直な個人的な意見であり、既に利権が動いているのかもしれない。

ミャンマーの中古車輸入政策の方向性に対する個人的な見解としては、新しい中古車がミャンマー市場にある程度普及した後に、段階的に規制されていく可能性が高いと考える。一方で変化が起きている市場には、常に新たなビジネスチャンスが生まれることはどこの市場も変わらない。ミャンマー第2の都市マンダレー市場の拡大、また、整備・アフターサービス市場の開拓がこれからのミャンマー自動車ビジネスの大きなキーワードとなるのではないだろうか。


<川崎大輔 プロフィール>
大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科特別研究員。
《川崎 大輔》

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