7月23日、ボルボは高出力と低燃費を両立させる新世代ディーゼルエンジン搭載モデル一挙に5車種、日本市場に投入した。デビューしたディーゼルモデルは5ドアハッチバック『V40』、V40の地上高を上げた『V40クロスカントリー』、Dセグメントセダン『S60』、同ワゴン『V60』、クロスオーバーSUV『XC60』。車格、性格はまちまちだが、190ps/400Nmの2リットル直4ツインターボディーゼル「D4」と8速ATというパワートレイン構成は全モデル共通だ。そのうち2モデルを短時間ながら軽井沢周辺の公道でテストドライブしてみた。
『S60 D4 Rデザイン』の次にテストドライブしたのは、Cセグメントに属する『V40 D4 SE』。全長4370mmはアウディ『A3』、BMW『1シリーズ』、メルセデス・ベンツ『Aクラス』などに比べてやや長く、“V”のレターが示すようにショートワゴン的なキャラクターに仕立てられている。
S60でも十分に良いパフォーマンスを発揮していたD4エンジンは約100kg軽いV40にとってはオーバースペックと思えるくらいに素晴らしいものに思えた。発進加速、中間加速、急勾配の登坂など、あらゆるシーンで動きはスムーズで、特定回転域で妙にトルクが盛り上がったり、逆に頭打ちになったりといったことがほとんどない。絶対性能もさることながら、ドライバーの意思と実際の出力の一致性が高いという感性品質の良さは、新パワートレインの大きな特徴といえる。S60ほどではないが、車内へのエンジンノイズの透過が小さいこともポジティブ要素のひとつだ。一方、スポーツモード時の8速ATのチューニングをもう一息洗練させてほしいという点もS60と同様だった。
足回りは走行性能向上に徹底的に振ったS60 D4 デザインに比べるとはるかに穏やかだが、旧来のボルボに抱いていたイメージよりはずっとソリッド感が高いものだった。旧軽井沢の別荘地の荒れた道路を走ると、ダンピングは良好で不快感にはつながらないものの、うねりや段差の通過においてはやや大きめの揺すられ感を伴う。聞くところによれば、これでもV40の初期型よりは大幅に柔らかくなったそうで、欧州市場ではロール剛性がさらに高いサスペンション仕様のまま売られているのだという。
別荘地から北軽井沢への短絡ルート、白糸ハイランドウェイへと向かう。ここは路盤が補修だらけで半径の小さいコーナリングが連続するというヨーロッパの田舎道のようなコンディションで、クルマの運動性能の資質をみるのには絶好のルートなのだが、果たしてそこでのV40の運動性能は驚くほど良かった。横Gがかかるとしんなりとロールし、ボンネットに重量の大きなエンジンを搭載していることを忘れるほど素直に鼻先が軽快にインを向く。
公道ゆえ限界まで攻め込むような走りはしていないが、少なくともオンザレール感覚で爽快に走るというペースでは、終始アスレチックなドライブフィールを楽しむことができるだろう。海外メーカー、とくに欧州メーカーが日本専用のセッティングを行うと、往々にしてロクでもない結果を招きがちなのだが、V40は欧州のような100km/h制限の長いワインディングのない日本の道路事情にはとてもよくマッチしたものに仕上がっているように感じられた。
このV40 D4 SEの基本価格は8%税込みで399万円。日本市場ではプレミアムCセグメントのエコモデルのライバルはあまり多くなく、ハイブリッドのレクサス『CT200h version C』(390.8万円)、BMW『218d アクティブツアラー M Sport』(389万円)くらいしかない。なお、ノンプレミアムではあるが、内外装のデザインがプレミアムセグメントライクなマツダ『アクセラスポーツXD』(306.7万円)が下位グレード『V40 D4』(349万円)の良いライバルとなりそうだ。
そのなかでV40の明確な優位点は190psと最も強力なディーゼルと、全車速対応の先進安全システムの両方を持っていることであろう。V40は新ディーゼルラインナップの中でも価格が最も低く、ボルボが日本市場でプレゼンスを上げることができるかどうかのカギを握るモデルと言える。そのセールススコアがどうなるか、興味深いところだ。