【人とくるまのテクノロジー展15】今後20年で自動車産業が直面する5つの課題とは

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経済産業省製造産業局自動車課課長補佐 田中宗介氏より「自動車産業戦略2014と今後の社会」
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  • 経済産業省製造産業局自動車課課長補佐 田中宗介氏
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5月20日パシフィコ横浜にて人とくるまのテクノロジー展2015が開催された。
同展内では「2050年の社会情勢を見通した交通システムと自動車用動力の方向性―将来の自動車社会にどのように備えたらよいか―」と題した春季大会フォーラムが開催された。

経済産業省製造産業局自動車課課長補佐 田中宗介氏が「自動車産業戦略2014と今後の社会」と題し講演を行った。

冒頭、田中氏は「社会で解決が求められる問題が非常に大きく多様になると、一つの会社ですべての物事に対するソリューションを出していくのは難しくなる。したがって、いかに産学官の壁をなくすかが課題であり、その課題に対する方策として今後“非競争のアウトソーシング”は有効なのではないか」と問題を提起。

続いて「アウトソーシングの受け皿としては大学などの研究機関が位置付けられるようになるのではないか。そして、こういった大学のオープン化は、大学にいる学生にとって自身の専門がどのように社会に活かされるかを実感できる機会にもなるのでは」と田中氏自身が工学部出身でありながら公務員となったエピソードを交えて語った。

田中氏は次に、昨年発表された経済産業省自動車戦略2014の概要について説明。「自動車産業は、我が国のリーディング産業であり、高い国際競争力を有し外貨を稼ぎ、国内において広大な裾野産業と雇用を抱え地域経済を支えている。また、その100年余りの歴史の中で品質、信頼性、生産性を不断に追求していくという姿勢を一貫して推し進め、その姿勢を通じて働く人々が成長を遂げていくという人づくりの役割をも担う国民産業である」とその重要性を指摘。また「我が国自動車産業が今後10年~20年で直面する課題」を5つに整理して列挙した。

ひとつめは、「環境・エネルギー制約」。地球環境問題の観点から自動車産業の燃費規制・排ガス規制は、制度及び技術の両面においてより深刻化している。エネルギーセキュリティの観点から、車も含めて石油依存度の低減を目指した取り組みが本格化している。

ふたつめは、「人口増加・一人当たりGDPの増大」。2025年までに世界人口は81億人に拡大すると予測されている。その後アフリカ以外の人口増加は鈍化し、2050年までに横ばいか減少へ向かう。人口成長、経済成長により新興国の中間層が増大し、2025年以降は一人当たりのGDPが先進国に近づく。

みっつめは「高齢化」。2025年までに先進国の、2035年までに新興国の高齢化が進展する。2050年までにアフリカ・インド以外が高齢化し、的確な対応がなされなければ、自動車保有台数の減少、交通事故の増加へと繋がる可能性も考えられる。

よっつめは「都市の過密化と地方の過疎化」。世界の都市人口は2025年に45億人、35年に53億人、50年に63億人へと増加が見込まれる。都市化に伴い、自動車による社会問題が深刻化する中で、都市インフラ・都市交通システムの在り方などの問題は重要なテーマに。過疎化も進展。2025年以降、地方において人口が減少する一方で自動車ニーズが高まる可能性が考えられる。

そして、いつつめは「新しい価値観の台頭」。多様で新しい価値観(デジタルネイティブ、ボーダレス、エイジレス等)を持つ顧客層が主要な自動車購買層に成長。世界の90年代以降生まれの人口は2035年に過半数を超えると見込まれる(2025年に31%、2050年に70%)。

これらの課題を抱える自動車産業の今後の方向性については、「現行は先進国主導、新興国追随モデルだったものを先進国・新興国同時対応モデルへ見直す」「車単体としての価値の追求から、システムとしての価値の追求へ」「すりあわせによる競争力確保から、すりあわせを補完する協調の活用」と3つの方策を挙げ、講演を締めくくった。

《北原 梨津子》

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