目立つというのは、この手のクルマには欠かせないポイントである。世界初のクルマに乗っているのに、誰にも気づかれなくていいなんて、そんな奥ゆかしい人にはお目にかかったことがない。
『MIRAI』は目立つ。カタログやスマホやデスクトップの画面や、はたまたショールームに置かれている姿よりも、公道で走っているときのほうが圧倒的に目立つのである。屋根があと数センチ低ければもっとスタイリッシュなのにという意見もあるが、乗りにくくて頭がつかえちゃうようなクルマは困る。なにせ世界初。担う期待は大きい。ちゃんと乗れることは大前提だろう。
スタートスイッチを押すと「ぷっしゅー」やら「ごぽっ」やら、さまざまな音がする。エンジン車ともHVともEVとも違うクルマを動かすという期待が否応なしに高まる。
走らせると、システムが床下にあり重心の低い走りは安定感がある。ついでに、重いエンジンがボンネットの下にないので、ハンドルをきったときの反応が素直だ。
でもやっぱり、好奇心が刺激されるのは聞こえてくる様々な音。いまだかつてない機構がさまざまに働いて聞いたことのない音がするのだから、わくわくしないわけがない。この音は……あの音は……と、水素の動きをあれこれ想像すると楽しくて仕方がないのだ。
特に、スポーツモードに入れてアクセルを踏み込んだときは、「使いきれなかった水素を捨てるのはもったいないので、再利用させるときに通すパイプ」から聞こえてくる音がいつも以上に大きくなり、「ひゅ~ん」と高い音を発する。それが「ひゅーひゅー」と盛り上げるときに発せられる声音に似ていて、勝手に気分が上がってしまうのだ。
エンジン音がしないぶん、タイヤが路面をたたくロードノイズが気になるけれど、人の耳は音を選択して聞くことができる。燃料電池ならではの音を、楽しみながら走りたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。