『ニコニコ超会議号』3年ぶりお座敷列車は関東の貨物線巡り

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今年の『ニコニコ超会議号』はお座敷車「華」を使用。品川駅から関東の貨物線を巡りながら会場のある海浜幕張駅に向かった。
  • 今年の『ニコニコ超会議号』はお座敷車「華」を使用。品川駅から関東の貨物線を巡りながら会場のある海浜幕張駅に向かった。
  • 『ニコニコ超会議号』の走行ルート。通常は旅客列車が運行されていない貨物線も回った。
  • 品川駅の発車案内掲示器。『ニコニコ超会議号』は「団体」の表示だった。
  • 英語表示は「PARTY」。
  • 7時55分頃、『ニコニコ超会議号』が品川駅10番線に入線。参加者の多くがカメラを向けていた。
  • 『ニコニコ超会議号』をプロデュースした向谷実さん。発車後、さっそく後方6号車の運転台で車内放送を行った。
  • 向谷さんの他にも多数の著名人が乗車した。写真は「SUPER BELL''Z」ボーカルの野月貴弘さん
  • めったなことでは通過しない「首都中央駅」の東京駅をゆっくりと通過。野月さんは興奮していた。

ドワンゴ・ニワンゴの動画共有サービス「niconico」のイベント「ニコニコ超会議」の一環として4月25日、品川駅(東京都港区)から「超会議」会場最寄駅の海浜幕張駅(千葉市美浜区)まで、団体臨時列車『ニコニコ超会議号』が運転された。

『ニコニコ超会議号』は2012年、鉄道マニアとして知られる音楽家の向谷実さんがプロデュースする団体臨時列車として初めて運行。大阪~上野間を北陸経由で結ぶ寝台列車と、品川駅から関東のJR線を周回し、海浜幕張駅までを結ぶお座敷列車の2本が運行された。

その後も「ニコニコ超会議」の開催にあわせ、大阪~上野間の寝台列車のみ毎年運行されてきたが、今年は「北陸新幹線の開通により、これまで使っていたルートの一部がJRの路線でなくなったため、物理的に運行する手立てがなくなった」(ドワンゴ)ことから、3年ぶりに品川~海浜幕張間のお座敷列車を運行。車両は485系電車改造のお座敷車「華(はな)」6両編成を使用し、向谷さんのほか芸能マネージャーの南田裕介さん、「SUPER BELL''Z」ボーカルの野月貴弘さんら、鉄道マニアとして知られる著名人も乗車した。

ルートの詳細は事前には明らかにされていなかったが、出発後に配布された時刻表で走行線路が判明。電車を乗り継げば1時間前後で移動できる品川~海浜幕張間を、約5時間かけて大きく遠回りしつつ、普段は通ることができない貨物線を走行するルートが設定されていた。友達に誘われて参加したという男性は「今までの寝台列車は出発地点が遠かったので参加できなかった。貨物線を通るのが楽しみ」と話していた。

『ニコニコ超会議号』は8時08分頃、品川駅を発車。東海道本線を北上して8時17分頃には東京駅をゆっくりと通過し、3月に使用を開始したばかりの東北縦貫線(上野東京ライン)と東北本線の線路を進んだ。東京駅を通過する列車は団体臨時列車でも珍しい。同駅の通過時に車内放送を行っていた野月さんは、日本の「首都中央駅」を通過していく様子を見ながら「(新幹線の)『のぞみ』や『はやぶさ』がなしえなかった“偉業”を達成した」などと、やや興奮気味に語った。

列車は8時35分頃、京浜東北線の川口駅を通り過ぎ、川口陸橋のあたりで東北本線から東北貨物線の線路に移った。現在の東北貨物線は湘南新宿ラインが運行されているが、川口駅付近で東北本線から東北貨物線に移る列車は旅客・貨物ともに通常は運行されておらず、車内ではどよめきが上がった。

大宮駅には9時16分頃、地上のホームに入線。2分後に発車して川越線に入った。川越線の旅客列車は現在、大宮駅の地下ホームを使用して埼京線との直通運転を行っているため、やはり通常は使用されていない大宮駅地上ホームと川越線を結ぶ線路(川越貨物線)をしばらく走行。編成両端の前面展望サロン室からは、レールの上面が赤さびた川越貨物線の線路の姿が見えた。

列車が川越線に入った頃、向谷さんとヴァイオリニストの大谷康子さんによる演奏が各車両ごとに行われた。曲名は「風・そよぐ」。向谷さんが三陸鉄道釜石駅の発車メロディとして制作した曲を自らアレンジしたもので、300年以上前の1708年に造られた大谷さんの愛器「ピエトロ・グァルネリ」の音色が、たかだが50年前の1965~1973年製(1997年改造)の485系「華」車内に響き渡り、多くの参加者が耳を傾けていた。

川越駅には9時50分頃に到着。ここで10分ほど停車して折り返し、再び川越線と川越貨物線、東北貨物線を進んでいく。京浜東北線上中里駅のホームが見えてきたところで、東北新幹線の高架橋をくぐって田端信号場(田端操)に入った。

右手に新幹線の車両基地(東京新幹線車両センター)を見ながらゆっくりと進み、田端駅の南東方に達した10時54分頃に停車。今度は東北貨物線の田端方と常磐線の三河島方を接続する短絡線(常磐貨物線)に進入した。この常磐貨物線も、今では定期運転の旅客列車が運行されていない。普段は見ることができない貨物線の車窓に歓声が上がり、窓の外にカメラを向けてシャッターを切る音が車内に響き渡った。

東北本線や日暮里・舎人ライナー、京成本線の高架下をくぐり、日暮里駅の方から伸びてきた常磐線の線路に合流。ここから武蔵野線の吉川美南駅を目指す。この間、昼食としてオリジナル特製駅弁「ミノルまっしぐら」が参加者に提供された。

常磐線と武蔵野線は新松戸駅で立体交差しているが、『ニコニコ超会議号』は新松戸駅の一つ手前の馬橋駅で分岐する貨物線(馬橋支線)に入る。ここでは武蔵野線の線路をくぐって同線の北側に出て、続いて北小金駅から南流山駅に向かう貨物線(北小金支線)と合流。武蔵野線の南流山駅に入っていった。

列車はそのまま武蔵野線の線路を進んで11時36分頃、吉川美南駅に到着。約30分停車して折り返し、武蔵野線と京葉線を通って最終目的地へ。品川駅を発車してから4時間48分後の12時56分頃、『ニコニコ超会議号』は海浜幕張駅のホームに滑り込んだ。向谷さんは到着直前の車内放送で、「今後も『ニコニコ超会議号』を運転していきたい」と話した。

《草町義和》

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