タイに地元資本の大手自動車メーカーは存在しないが、タイで開発された独自ブランドの車種はある。ショー会場で見かけた『トランスフォーマー』もそんな1台だ。
トランスフォーマーは、タイルーンという企業グループが製造するオフローダー。トヨタのピックアップトラック『ハイラックス・ヴィーゴ』に独自のボディを架装したもので、フレームやエンジン、それにインパネはベース車両そのままとなっている。
つまりホイールベースは3085ミリメートル、エンジンは3リッター直4。ただしボディはまったく独自に開発されたもの。曲面のない簡素な造形だが、すべて樹脂ではなく鋼板で作られている。
タイではかつて、ピックアップトラックの荷台を豪華なキャビンに改造するコーチビルダーがいくつか活躍していた。タイルーンもそうした架装ビジネスで知られていたが、自動車メーカーのSUVラインナップが充実したことで需要が減少。
しかし同グループでははもともと、トヨタ以外にも複数の自動車メーカーと提携を結んでいて、現在もタイ国内でそれぞれのブランドの車種を組み立てる工場を運営している。そうして得た技術力やノウハウを活用し、独自車種の生産を手がけるようになった。
しかしトランスフォーマーは最初から乗用SUVとして開発されたのではない。まずタイ陸軍のために多目的車両、MUV4を開発。MUVとは「ミリタリー・ユーティリティビークル」の略。そしてそれを民生用に仕立て直し、販売しているのがトランスフォーマーとなる。
見た目は若干ハマーに似ている印象もあるが、それもそのはず。軍用車両を民間向けにするという、もともとの出自が同じなのだ。