ドイツのサプライヤー、シェフラーは世界の自動変速機市場において2022年までにDCT(デュアルクラッチトランスミッション)が約2割のシェアを得ると予測している。しかしこの推計によれば、地域によるシェアにはかなり差がでていることが分かる。特に欧州と中国では半数前後がDCTなのに対して、米州地域やASEAN/インドではAT/ CVTが主流と見込む。日本でもDCTはシェアを若干伸ばすものの、全体の1割にも満たない予測だ。この理由はなぜなのか。
自動車事業部トランスミッションテクノロジー技術部ジェネラルマネージャーの中澤智一氏によれば、「DCTはマニュアルトランスミッションの構造をベースとしているので、MTの生産設備があれば容易にDCT化が実現できる。またエンジンもMTとの組み合わせを前提においた特性を持たせているのでDCTとのマッチングを図ることは比較的たやすい。欧州車は現在でも圧倒的にMTが主流なので、生産効率を考えればDCTがシェアを伸ばしていくと予想できる」と説明。
また自動車が使われる環境も大きく影響すると中澤氏は語る。「欧州では渋滞が比較的少なく高速で走行する場面が多いが、日本では渋滞のストップ&ゴーが多く、変速ショックのないCVTやトルコンATが好まれる傾向にある。ただ、こうした傾向はこれまでの話であり、DCTの技術進化でトレンドやお客様のニーズは変わってくるかも知れない」。
またDCTには湿式と乾式があるが、ハイパワー車ではエンジンの大トルクをトランスミッションが受け止める際に発生する熱を冷却するためにオイル回路を持たせた湿式DCTが採用されることが多い。一方小型車中心に採用される乾式タイプはその冷却回路がない分、構造をシンプルにでき効率を向上できる。
同技術部の金哲中氏によれば、「生産ボリュームを乾式と湿式で分けると2011年に乾式が湿式を上回り、2014年には乾式システムの年間生産量が300万台を超えた。このうち乾式のほとんどは当社のDCT」と述べる。
湿式タイプについてはシェフラーは後発であり、ボルグワーナーなどの競合も存在するが、今後は湿式DCTのバリエーションを拡大し商品力を強化していくことを言明。同社が持つモジュラー技術を活かして、基本構造はそのままに中型乗用車から大型トラックに至る幅広いトルクバリエーションに対応した湿式DCTをラインナップさせていくという。