2月25日にグランプリが発表された、日産『ジューク』のデザインコンテスト「JUKE by YOU」。特設サイトでデザインを考え、応募するという形のコンテストで、1万3500点を超える作品が集まった。
その中からグランプリに輝いたのは、さまざまな和風のテイストに包まれた杉本昌士さんの作品。作業を始めたらのめり込んでしまい「朝起きてデザインを始めたんですが、気づいたときには日付が変わっていました」という。
フロントまわりは歌舞伎の隈取をアレンジしたグラフィック。当初はなにげない気分であしらってみたようだが、「今にして思えば、ジュークが発売されたときにものすごいインパクトを受け、傾いていると感じたことが根底にあった」と杉本さん。
これをグランプリに選んだ理由について、日産自動車グローバルデザイン本部の秋山芳久ダイレクターは「ジュークの新しい世界観を見せていること、ジュークの造形を昇華させていること、そしてクリエイティビティ(創造性)があること、という審査ポイントを高いレベルでクリアしている」と話す。
また秋山ダイレクターは、コンテストの企画意図や選考の経緯についても説明。それによると、日本的な感覚に基づいた、ジュークの世界観を拡張する方法としてコンテストを企画したのだとか。
「ジュークはSUVとスポーツカーを合体させた車種。ただし混ざってしまうのではなく、それぞれの個性が残ったまま合体させるということを考えてデザインしています。二面性を持った車種なんです」と基本的なキャラクターについて解説。
そしてこれまでジュークRやジューク・ニスモなどハイパフォーマンスな仕様が作られてきたが、これらは「欧州的な感覚での、ジュークの世界観拡張」だったという。そして別の方向の世界観拡張手段を模索し、「パーソナライゼーション」を日本的拡張として展開。それをいっそう深く掘り下げたのが「JUKE by YOU」だとか。
「日本は“キモかわいい”とか“ブサかわいい”とか、異なったイメージをひとつにまとめた複雑なものも普通に受け入れてもらえる。二面性を持つジュークのパーソナライゼーションを、より深めることができると思ったのです」(秋山氏)。
さらに、メーカーから一方的に提案するだけでなく、ユーザーとともに「コ・クリエイション」(共創)することで、二面にとどまらない多面的な価値観を追求。そして日本人の持つグラフィックのセンスを期待して、コンテストの開催を決めたのだという。
選考作業はまず作品のグループ分けから。「Geometrical Arts」、「Urban Arts」、「Japanese Modern」、「Psychedelic Graffiti」、「Food “CAR” Arts」といったように分類され、各グループの代表として選出したものが19のファイナリストとなった。
そして19案の中から、「日本から発信するジュークの新たな価値観」を備えた作品として、杉本さんの作品が選ばれた。しかし、ただ単に「和風だから」という理由で支持されたわけではない。
杉本さんは作品について「日本の個性的なイメージを全体に配置した」「京都在住なので、国内外の観光客のリアクションを見てみたい。喜んでくれたら自分も嬉しいし、旅のちょっとした思い出のひとつになってくれれば」と語っている。このコメントからは、まさに日産の求めていた要素が作品に盛り込まれていたのだということが理解できる。
秋山ダイレクターは、ラッピングを施された実車を見て「これをグランプリに選んでよかった」と感慨深げに語っていた。