【中田徹の沸騰アジア】安定成長中のマレーシア市場、苦戦続くプロトンの将来は?

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マレーシア(イメージ)
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国営石油会社の名前を冠した、イスラム様式のデザインが美しいツインタワーは、東南アジアで最も高い建築物だ。その巨大建築が象徴するように、マレーシアは東南アジア諸国の中では早い段階で中進国となり、現在は先進国の仲間入りを目指している。経済成長に伴う自動車市場の拡大を背景に、外資メーカーの攻勢が続く。その一方で目立つのが、国策企業プロトンの苦戦だ。

◆6年後に先進国入り目指す

筆者は11月後半、久しぶりにマレーシアを訪れた。クアラルンプール市内を歩いていると、言語や人種の多様さに改めて驚かされる。繁華街ブッキビンタンの一角にある高級百貨店では、巨大なクリスマスツリーが吹き抜けのロビーを独占し、BGMの「サンタが街にやってくる」が聞こえてくる。

イスラム教徒かどうかは分からないが、多くの買い物客が電飾に彩られたクリスマスのモチーフをスマートフォンのカメラに収めていた。マレーシアは、バンコクやジャカルタとは比べものにならないほどの多様性を内包する一方で、「安定」や「バランス」といった言葉で形容されることが多く、様々なことが協調しているようにみえる。

人口3000万人のマレーシアでは、既に1人当たりGDPが1万ドルを超えている。1991年にマハティール首相(当時)が打ち出した30年間の長期の政策ヴィジョン「ワワサン2020」のなかで、2020年までに先進国の仲間入りを果たす、との構想を示したが、達成時期を6年後に控える現在もインフラ分野などへの投資が進んでいる。インフラ投資や堅調な個人消費、輸出拡大などに支えられ、マレーシアの経済は4%台後半~6%程度の経済成長をみせている。

◆自動車市場は2020年に80万台へ

マレーシアはクルマ社会であり、自動車市場は既に成熟している、と言われる。四輪車の保有率は、統計上では1000人あたり400台となっており、極めて高い水準だ。四輪車を既に保有している世帯のうち複数保有の比率は世界最高水準と言われ、庶民の足として広く普及している。

言い換えれば、成長の余地が少ないということだが、当面は安定的な拡大が続く公算。2014年には前年比1%増の66万台強となる見通しで、僅かながらの成長だが3年連続で過去最高を更新する可能性が高い。2015年4月に税率6%の販売・サービス税(GST)の導入される予定で、これに伴い販売税(自動車への税率は10%)が廃止されるため車両価格が引き下げられるとの期待がある。こうしたプラス要因に支えられ、2015年の四輪車販売は69万台前後に達すると予想される。

また今年7月にはマレーシアの自動車工業会が内需の将来予測を発表し、2018年に74万台に達するとの見方を示した。さらに2020年には80万台に達するとの予測が一般的。少なくとも2020年まではインフラ投資などが景気を下支えすると考えられること、所得上昇、人口増が主な理由だ。マレーシアの人口ピラミッドはきれいな三角形を描いており、若年世代の層の厚さが経済成長を後押しすると考えられる。

◆競争激化する市場、プロトンの将来は

安定的な市場拡大が続く中、市場競争は激化している。2014年9月にダイハツが出資するプロドゥアが新開発の『アジア』を投入。10月末までの予約は4万台を大きく上回り、好調な発進を見せている。また、トヨタやホンダなどの外資メーカーが攻勢をかけている。一方で、第1国民車メーカーのプロトンは製品面の競争力不足から市場シェアを右肩下がりに減らしており、現在は20%を下回る状態。新規に独自開発した『イリス』を2014年9月に発売しており、安全性のアピールを軸に巻き返しを図りたい考えだ。

筆者は今回のマレーシア滞在中にプロトンの本社を訪れる機会を得た。その日は、元首相でありプロトンの生みの親でもあるマハティール氏(2014年5月にプロトン会長に就任)が出社する日だったため、図らずもマハティール会長の存在感に触れることになった(会うことはなかったが)。苦戦を続けるプロトンの再生策を、マハティール会長はどう考えているのだろうか。マレーシアの国力を飛躍的に高めたその手腕に、注目だ。

《中田徹》

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