フォード『エコスポーツ』は『フィエスタ』の基本プラットホームをベースに作られた世界戦略の小型SUVだ。新興国などもターゲットにしたクルマで、日本にはタイ製のクルマが輸入されている。
外観デザインは塊感があり、大きめのフロントグリルと合わせて独特の存在感を主張する。インテリアはコンパクトクラスながら、独特のデザイン処理が施されることで、安っぽさを感じさせず、一定の質感を確保している。
サイズの割に室内空間はまずまずの広さで、ラゲッジスペースは標準状態で333リットルから、6:4分割のダブルフォールディング機能付きリヤシートを倒すと、最大で1238リットルにまで拡大する。豊富な収納スペースと合わせ使い勝手は上々だ。
1.5リットルの自然吸気DOHCエンジンは吸排気独立式可変バルブタイミング機構付きで、82kW/111N・mのパワー&トルクを発生する。際立ってパワフルではないが、1270kgの車両重量に見合った実力である。様々な走行シーンで動力性能に不満を感じることはなかった。
6速のデュアルクラッチは滑らかな変速フィールで、通常のAT車を運転するのと変わらない感覚で運転できる。
SUVなので最低地上高は180mmと高め。本格的な悪路やオフロード走行も想定に入れたものとされている。乗り心地や操縦安定性に影響する要素だが、妙にふらついた感じを与えることもなく、普通のコンパクトカーと変わらない感覚の走りを実現していた。
足回りの仕様そのものはフィエスタ用がベースとされていて、SUVボディのエコスポーツに向けて入念なチューニングが行われたという。最近のフォード車は全体に足回りが良くできている。
最近は輸入車のコンパクトSUVの競合が激しく、『クロスポロ』を始め、プジョー『2008』、ルノー『キャプチャー』などの競合車がある。エコスポーツの価格は246万円で、競合車に対して競争力がある。フォードの販売規模でこの価格設定は相当に頑張ったものだ。ホンダの『ヴェゼル』など、日本車に比べたらまだ高いが、輸入車としては納得モノの設定といえる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。