「座る」とはどういうこと?…シートサプライヤーがフォーラム開催

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会場入口には、同社のミニバン用シートのほかスキンテックスのハンモックチェア、イームズのラウンジチェアが展示された
  • 会場入口には、同社のミニバン用シートのほかスキンテックスのハンモックチェア、イームズのラウンジチェアが展示された
  • フォーラムは井上満夫社長の挨拶からスタート
  • 4人の登壇者が活発な議論を交わした
  • 松任谷正隆氏(左)と澤口俊之氏
  • 根津孝太氏(左)と中村格子氏
  • 会場入口には、同社のミニバン用シートのほかスキンテックスのハンモックチェア、イームズのラウンジチェアが展示された
  • 2013年に公開したミニバン用シート。これはホンダ・オデッセイの2列目座席に採用されている
  • 2013年に公開したミニバン用シート。これはホンダ・オデッセイの2列目座席に採用されている

クルマで移動しようとするとき、「座る」のはあたりまえ。それでは「座る」とはどういうことなのか? そんな哲学的な疑問について考えるイベント「座フォーラム」が11月22日、東京の虎ノ門ヒルズで開催された。

「座フォーラム」を主催したのは、数多くの4輪、2輪メーカーにさまざまな座席を供給しているサプライヤー、テイ・エステック(TSテック)。隔年で開催され、今回が3回目となる。

同社には「もっと快適な“座る”を追い求める」というテーマを掲げ、「座る」ということを哲学的、科学的に探求する「座ラボ」がある。これは部署の垣根を越えて若手社員が集まり、チームを組んで未来の「座りかた」を構想する研究会だ。フォーラムはこの座ラボの研究成果を発表する場としての役割も持っている。

今年の座ラボは3チーム。チームAの“Ambient Seat”はクルマのドアを開け、座席を目にしたときの「わくわく度」を数値化するといったリサーチを重ね、色などが変わって情緒面を刺激する座席を構想。

またチームBの“Deformable Seat”は自動運転の普及した時代に、座席の向きや形が変わることで乗員が空間を共有し、コミュニケーションが楽しめる提案。どれぐらいの角度で向き合うのが最適かを研究したとのこと。

チームCは「立つ」と「座る」の中間に着目し、「立ったまま座る」姿勢を考案。さらにそのための機能を身につけたまま歩き回れる“着るシート”というアイデアを披露した。

3つのアイデアはいずれも未来を見据えたコンセプト提案であり、既存のメカニズムで具現化できる現実的なものではない。このためラフなスケッチを描いた程度で研究は終了。ただし「座る」という機能の未来について考え、コンセプトを練り上げたことは各個人だけでなく会社にとっても、大きな財産となったことだろう。

フォーラムの後半はゲストによるトークセッション。登壇者は松任谷正隆(音楽プロデューサー/自動車評論家)、澤口俊之(脳科学者)、根津孝太(クリエイティブ・コミュニケーター)、中村格子(医学博士・整形外科医)の4名。クルマに限らずさまざまなシチュエーションでの「座る」ということに関して、活発な議論が交わされた。

意見の一部を紹介すると、「考え事をするときにはウロウロ歩き回る人が多い。しかし座ったままでも足を動かすことで、発想力を刺激することができる」、「座骨で体重を支え、脊椎が立った状態になる“正しい姿勢”で座っていると仕事の効率もよい」「運転のために座る椅子は、挙動を感じ取るインターフェイスと捉えてデザインしている」などなど。

また、中村氏は「便利であることと、人にとって良いことは違う」と発言。椅子に限らず、あらゆる機器や製品にたいして「優れた技術であっても、使い方しだいでは生物としての能力を退化させる危険なツールになりかねない」という警鐘とも言えるコメントだった。

《古庄 速人》

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