14日にオートポリス(大分県)で決勝レースが実施された全日本選手権スーパーフォーミュラ(SF)第5戦。予選9位のピンチだったジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが決勝3位に入り、チャンピオン争いトップの座を守った。星野一義監督も絶賛の決勝巻き返しだった。
予想通り、実質ノーピット戦となった今回の215km無給油設定レース。グリッド位置が重要になる状況下で予選9位に終わっていたオリベイラ(#19 Lenovo TEAM IMPUL/トヨタ)に関しては、陣営の高橋紳一郎チームディレクターも「ポイントリーダーの座を維持するのは難しいかもしれない」と考えていたくらいだった。だがオリベイラは1周目に6つポジションを上げ、そのまま3位表彰台を獲得、選手権首位も守った。
ゴール後には星野監督も「今日の3位は(予選位置とタイトル争いのことを考えれば)勝ったようなもの」と、オリベイラを笑顔で祝福したほどで、この結果が陣営にとって望外のものであったことを窺わせた(闘将・星野監督が優勝以外でここまで喜ぶのは極めて稀である)。
「戦略の取りようがないレースフォーマットだったので、とにかく1周目が大事だと思っていた。1コーナーでアウト側に進路を取ったことがよかったようだね。いい1周目にできた。正直、今日は5位か6位が精一杯かと思ってもいたけれど」(オリベイラ)
オリベイラの好スタートと表彰台獲得に誰より舌を巻いたのは、完勝してポイントランク2位に上がったアンドレ・ロッテラー(#36 PETRONAS TEAM TOM’S/トヨタ)陣営の舘信秀監督だ。「今日はアンドレが『強いアンドレ』を見せてくれてよかったんですが、JP(オリベイラ)がまさか3位まで来るとは夢にも思っていませんでした。それさえなければ、とてもいい一日だったんですけどね(笑)」と、レース後のトップ3選手&優勝監督会見で笑わせてくれた。これを聞いて、F3時代にTOM’Sで走っていたオリベイラが「ゴメン」と日本語で答えてさらなる笑いを誘うシーンもあったが、とにかく今回のオリベイラは窮地に立たされていたのだ。まさに起死回生の好スタートだった。
これでドライバーズチャンピオン争いはオリベイラが29点で首位堅持、26.5点のロッテラーが追い、今回6位で計25点とした中嶋一貴(#37 PETRONAS TEAM TOM’S/トヨタ)が続く形勢に。
開幕戦勝者のロイック・デュバル(#8 KYGNUS SUNOCO Team LeMans/トヨタ)は今回6番グリッドからの発進だったが、スタート直後の1コーナーで他車に追突される格好で実質最後尾に落ち、最終的に15位。20.5点からポイントを伸ばせず、少し苦しくなってきたか。ただ、残り2大会で最大29点獲得できることを思えば、デュバル、そして現在20点の石浦宏明(#38 P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)あたりまでは圏内といえるかもしれない。
ただ、当面のタイトルレースの主役はオリベイラとロッテラーになった。両者とも今後に向けては「タイトル争いに戦略なんてない」と異口同音に語り、「全力を尽くすのみ」(ロッテラー)、「すべてのチャンスをしっかり、ものにしていくしかない」(オリベイラ)と、やはり同義の決意を語る。
SFの次戦は9月27~28日、スポーツランドSUGO(宮城県)での開催。オリベイラが4年ぶりの戴冠へ前進するか、ロッテラーが3年ぶりの王座へ向けて先頭に躍り出るのか、2週間後の形勢変化が注目される。なお、仮にオリベイラがSUGO(1レース制)でポール・トゥ・ウインして11点獲得し、ロッテラーら他の上位陣が無得点に終わったとしても、その次の鈴鹿(2レース制)では最終戦ボーナスがある関係で最大18点獲得できるため、タイトル争いは決着しない。今回のポートポリス戦の結果で、最終戦決着となることが確定している。
また、チャンピオン争いの動向とともに、今季終盤2大会に道上龍が率いる新チーム「ドラゴ・コルセ」から復帰する伊沢拓也(GP2参戦中)の戦いぶりも、次戦SUGOでは新たな焦点となりそうだ。