“消費者のwantから考える” 創造的破壊の時代を生き抜くためのモビリティ活用

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アクセンチュア戦略コンサルティング本部マネジングディレクター清水新氏
  • アクセンチュア戦略コンサルティング本部マネジングディレクター清水新氏
  • 「Accenture Mobility Insights Report 2014」説明会。司会を務めた城下洋輔氏(アクセンチュア マーケティングコミュニケ―ション部)
  • 「Accenture Mobility Insights Report 2014」説明会。司会を務めた城下洋輔氏(アクセンチュア マーケティングコミュニケ―ション部) 
  • アクセンチュア戦略コンサルティング本部マネジングディレクター清水新氏

あらゆるものがネットワークでつながる世界になりつつある。

現在(2014年)ネットワークに繋がる機器数は60億台なのに対し、2018年にはおよそ3倍の180億台となることが予測されている(Gartner調べ)。また全世界の月間モバイルデータトラフィックでいうと、ひと月あたり2.6エクサバイトなのに対し、2018年には15.9エクサバイトへ。6倍となることが予測されている(Cisco VNI Mobile調べ)。

アクセンチュア戦略コンサルティング本部マネジングディレクター清水新氏は、これらのデータを提示し「デジタルの進展によって、ネットワークに繋がるデバイスの数やデータ量が今後わずか4年で急増することが予測される」と述べる。そして、これまでデジタル化は人への直接的な影響にとどまっていたものの、今後産業規模で影響をおよぼしていく、と指摘する。

7月30日、企業のモビリティ活用に関するCIO調査「Accenture Mobility Insights Report 2014」の中でおこなわれた清水氏による講演「創造的破壊の時代を生き抜くためのモビリティ活用」をレポートする。

◆日本企業が優先するConnected Productsは?

続々とネットワークに繋がっていくものたち(Connected Products)のなかでも、日本企業が重要視しているのはどのようなものなのか。7月30日アクセンチュアが発表した「企業のモビリティ活用」に関する調査結果「Accenture Mobility Insights Report 2014」では日本企業CIO100名に対し、「自社ビジネスの優先順位と関連性が高いと考えるConnected Products」を問う調査がなされた。この調査ではConnected Building / Plantソリューションがトップで48%、続いてConnected Homeソリューションが40%、Connected Vehicleソリューション39%という結果となっている。

デジタル化による業界荒廃 変革の最終ステージは産業間のコンバージェンスへ 

Connected Productsが提供するデータにより、活用が進むと思われるデジタルテクノロジー。この「デジタルテクノロジーが企業経営にもたらす変革の最終ステージは産業間のコンバージェンスである」。7月30日アクセンチュアが発表した「企業のモビリティ活用」に関する調査結果「Accenture Mobility Insights Report 2014」ではこのように述べられている。

たとえば自動車業界を例にすると設計・開発・製造・販売・アフターサービス、のように、あらゆる産業が独自のバリューネットワーク構造をもっている。

しかしデジタルテクノロジーは、こういった既存の産業構造に対して、消費者視点の“want”を起点としたダイナミックな再編成を引き起こす破壊力をもっているという。すなわち、旧来別々の市場に属しており、直接的な競合や協業が発生することのなかった企業同士が、時にパートナシップを組み、時には熾烈な競争を繰り広げる傾向が今後さらに激化することを意味する。この再編成の過程では「無数のエッジデバイスから収集されたデータを価値に変換し、消費者に提供するプラットフォームと、そのデータを利用する企業や組織で構成される新たなシステム」が創出される、という。

次世代の創造的破壊者となり飛躍することができるのは、ここで「新たに登場したプラットフォームの“胴元”の地位を獲得できた企業や、そのプラットフォーム上のプレイヤーとして新たなポジションを獲得できた企業」と述べられている。その一方で、新たなシステム一部となることができなかった企業は、現在の地位やそこから得ていた既得権益の一切を失うことになる、という。

新たなシステムとしての先行事例が、ここでいくつか挙げられている。たとえばテレマティック(自動車などの移動体に通信システムを組み合わせ、リアルタイムに情報サービスを提供すること)プラットフォーム領域では、日産自動車と損保ジャパンによる自動車保険特約“ドラログ”が紹介されている。

◆日産自動車×損保ジャパンの“ドラログ” 消費者目線でサービスを切る先行事例に

消費者にとって、自動車運転中の万が一の事故に備える保障はいうまでもなく重要なこと。一方、「これまでの保険商品は、ドライバーのマスセグメンテーションによるリスク分散で根付けがなされており、個々のドライバーから見た場合は必ずしも適正なリスクを反映しておらず割高となることもあった」。

そのような背景から、走行距離や運転行動に応じた保険へのニーズが高まっており、この点「日産は顧客とのカーウイングス(カーナビ)契約にもとづき、リーフに搭載されたセンサーから車両の位置・走行距離などのプローブデータを常時取得し、センターに集約している。同社は、契約者の同意のもとで、そのプラットフォームに格納されているデータを保険会社へ提供している。損保ジャパンは、プラットフォームから提供されるプローブデータをもとに、顧客一人ひとりの走行距離に連動した自動車保険特約“ドラログ”を提供している」

同事例では、現段階では運転行動連動型の商品には至っていないという。しかし走行距離によって二年目以降の保険料を割り引く走行距離連動型の特典が提供されているという。

清水氏は、新システムが創出され、変革がおこりうる産業は(自動車に限らず)電力・機械・医療・小売り・保険・建設など今後多岐にわたることを説明。デジタル化によってもたらされる価値も、今後は「制御」や「ロボット」の領域に広がる、と述べ、市場・産業にとらわれない俯瞰的視点の重要性を再度強調した。

《北原 梨津子》

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