【中田徹の沸騰アジア】インド四輪市場、2020年 600~700万台に…サステナブルな成長が鍵

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インド自動車販売台数(2013年1月~2014年6月)
  • インド自動車販売台数(2013年1月~2014年6月)
  • ナレンドラ・モディ氏
  • マルチスズキのディザイア
  • マルチスズキ セレリオ(デリーモーターショー14)
  • ホンダ モビリオ(デリーモーターショー14)
  • トヨタ・エティオス クロス(デリーモーターショー14)

インドでは、総選挙で勝利したインド人民党(BJP)のナレンドラ・モディ氏が2014年5月26日に首相に就任し、新政権が発足した。

経済改革推進を唱えるモディ政権誕生により景気回復への期待感が高まっており、自動車市場にも明るい兆しが見え始めた。歩みを止めていた巨象だが、中国・米国に次ぐ世界3位市場に向かって再び前進を始めた。

自動車市場は回復基調

インドの四輪車販売台数は2014年6月に前年同月比6.7%増となり、2012年11月以来のプラスに転じた。乗用車に限ると、2014年5月に続いて2ヵ月連続で前年同月実績を上回っている。新首相の経済政策「モディノミックス」への期待感や2014-15年度暫定予算で実施された自動車に対する物品税減税が追い風となり、1年半続いてきた市場低迷期から抜け出したようだ。

2014年6月末までとされていた物品税減税だが、7月10日発表の本予算案において年末までの継続が決まり、足元の環境は悪くない。また、インドの主要株価指数SENSEXは7月後半時点で2万6000を超えており、過去最高の高値圏で推移。年初時点の2万1000から20%強上昇しており、資産効果も消費マインドを押し上げている。

年度ベースの販売台数をみると、2013年度(2012年4月~2013年3月)に過去最高の346万台に拡大したが、昨年度(2014年度)に前年度比9.3%減の314万台に縮小した。経済情勢が改善している今期(2015年度)については、最大手のマルチスズキが4~5%増と予測するなどプラスの見通しが広がっており、330万台前後に回復する可能性が高い。今後、巡航速度と言われる年率5~10%増での成長が見込まれる。

四輪車市場2020年予測

筆者は最近、親交のあるインド自動車部品工業会(ACMA)のA氏と、その彼が連れてきたプネ在勤のインド人自動車市場アナリストK氏を交えて会食する機会に恵まれた。A氏とはデリーモーターショー(今年2月)以来5ヵ月ぶりの再会だったが、彼が挨拶代わりに言ったのは「2020年のインド市場を何台と予測しているか? 」だった。

2010年にACMAが発表した将来性分析レポート「Vision2020」では、インド自動車産業のポテンシャルが十分発揮された場合、2020年度の四輪車生産が1080万~1200万台に達すると指摘していた。輸出分を考慮すると、内需が1000万台前後にまで膨らむ可能性があると言い換えることができそうだが、2012年末からの市場低迷によりその可能性はしぼんでしまった。現在では、2020年600万~700万台とみるのが主流だろう。

「持続可能な成長が大事」

従来のシナリオと比べると将来予測は後退しているが、今後数年以内にドイツや日本を抜き、中国・米国に次ぐ世界3位の巨大市場が誕生するということに変わりはない。自動車産業を成長戦略のひとつに位置付けるインド政府は、成長の推進力である内需市場をどう育成するかに腐心してきたが、最近では成長速度をどうコントロールするかという問題意識を強くしているようだ。

2000年代に中国の四輪車市場が年間100万~200万台ペースで拡大したが、中国と同等の人口を抱えるインドではそのようなことは起きないだろう。政治の統治システム等が異なるため、道路インフラへの投資が中国のようなスピードでは進まないことがひとつの要因。また、石油輸入国であるインドでは、燃料消費増加に起因する貿易赤字拡大および補助金増加が看過できない問題となっている。

モディ政権が発表した今回の本予算案をみる限り、自動車産業政策に大きな方針転換はない。従来の成長路線を維持しつつ、成長・財政・環境・エネルギーのバランスを重視した安定成長を目指すことになりそうだ。そう言えば、先述のK氏も「これからはサステナビリティと環境が大事だ」と強調していた。

《中田徹》

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