街中でも扱いやすいボディサイズに大人4人が快適に移動できる居住性、そして使い勝手と走りも兼ね備えたいわゆる「Cセグメント」カーは、各メーカーがしのぎをけずる激戦区だ。その中でも、2013年度のガソリン車、1.6~2.0リットルワゴンタイプで販売台数トップを記録したのが、スバル『インプレッサ』である(日本自動車販売協会連合会調べ)。
スバルの注目モデルというと、先頃登場したばかりのツーリングワゴン『レヴォーグ』や、まもなく発表されると噂のAWDスポーツ『WRX』だが、インプレッサも着実な支持を得ていることが明らかになった。こうしたクルマとしての基本性能を磨き上げたモデルの存在が、最近のスバル躍進の原動力ということができるかもしれない。では、数あるライバル車の中から、インプレッサを選ぶ“決め手”となったポイントはどこにあるのか。オーナーの声を通じて、このヒットの要因を探ってみたい。
「四駆は燃費が悪い」というイメージを払拭
今回話を聞いたのは、東京都内にお住まいで「インプレッサ スポーツ 2.0i EyeSight」を所有する菅田公一さんと、そのご家族。
これまで、大型SUVやミニバンといったインプレッサよりも大きなクルマに乗っていたという菅田さん。「でも車庫の関係とか、燃費の問題とかで、もっと小さいものにしようと考えていました。それと息子が免許を取ったので、息子も運転しやすいクルマがいいだろう、ということでサイズを小さくしたかったんです」という。
SUV、ミニバンを経てのダウンサイジング。その中で菅田さんがこだわったのが“四駆”(AWD)だった。
「軽自動車までダウンサイズする気はなかったんですけど、1500ccクラスで燃費の良いクルマを選ぼうと最初は思っていました。これまでのSUVやミニバンもずっと四駆だったんですね。実家が富山なんで冬は雪が凄いんです。家族でスキーに出かけることもあったし、その意味でも四駆は絶対外せない条件でした」(菅田さん)。
さらに、もう一つ外せない“燃費”という条件もあった。日中は菅田さんの奥さまがメインで使用する。奥さまによれば「買い物がメインで一日10kmくらいを走ります。日常で取り回しが良く、燃費が良いことが絶対条件だったんです」とのこと。
コンパクトなボディにAWD、そして優れた燃費。「これらの条件になかなか最適なのが見つからなくて、そんな矢先出会ったのがインプレッサだったんです」(菅田さん)。
同車に採用されている「シンメトリカルAWD」は重心位置を低く保ち、前後左右のバランスに優れた構造を持つ。またシンプルな構成とすることで、パワーロスや摩擦抵抗が少ない。そのため、高速走行時の安定性や悪路でのコントロール性を高めるとともに、燃費向上も可能にしているのだ。
菅田さんは「四駆で燃費がいいクルマってなかなかないですよね。でも、インプレッサは違いました。街乗りでも平気でリットルあたり10km台半ばは行きますし、高速走行でしたけど燃費計で一度だけ平均燃費が20km/リットルを超えたこともあるんです。その時は家族中で大喝采してしました」と満足げだ。
◆「安定感ある走りで娘の車酔いもなくなった」
インプレッサの2.0リットルモデルが搭載する「新世代BOXERエンジン」は最高出力150ps/6200rpm、最大トルク20.0kgm/4200rpmを発揮。スバル独自の水平対向エンジンは、振動が少なく、心地よいフィーリングを演出する。そこに組み合わされるのが、滑らかな変速を実現する新型トランスミッション「リニアトロニック」だ。
走行時の印象については、「予想通り、安定感があっていい走りをします。以前からスバルのフラット4(水平対向エンジン)には一度乗ってみたいと思っていました。エンジンが低い位置にあるので重心が低く、走りに安定感が出るんですね」と菅田さん。車酔いをしやすかった娘さんも安心して乗れるようになったそうだ。
ダウンサイジングを図ったことで、使い勝手に変化はなかったのだろうか。奥さまによれば、「インプレッサに乗り換えたあとでも荷物が入らないと思ったことはないですね」とのこと。アップライトな姿勢で運転できるドライバーズシートからの視界はもともと良好だったが、カーナビにバックカメラを追加することで、車庫入れのしやすさがさらに増したという。
居住性についても、さすがにミニバンの広さにはかなわないものの、大人4人が快適に移動できる必要十分のスペースは用意されている。むしろ全長4.4mあまりのスポーティなフォルムのなかにこれだけの居住空間を実現していることに、パッケージングの妙があるだろう。
その内外装のスタイリングも夫婦共にお気に入りだとか。「前から見た目はかなり良いと思っていました。Cセグメントならではのカタマリ感とスポーティなフロントマスクが精悍で、見るたびに惚れ惚れします(笑)。内装についても、色々な車種と比較しましたが見劣りしていない。なによりも機能的なのがいいですね」(菅田さん)。
◆ディーラースタッフの熱意に感激、EyeSightがもたらす安心感にも満足
もう一つ、菅田家がインプレッサを選んだ理由には、ディーラースタッフの熱意もあった。奥さまは「他にも候補のクルマがあったんですが、とにかくいろいろ熱心に対応してくれました。“車庫に入るかどうか不安”って言ったら、すぐに自分のクルマを持ってきて車庫入れを試してくれたんです。(運転支援システムの)“EyeSight(アイサイト)”装着車を選んだのもこの方のおかげだと思っています」と話す。
同車が搭載するEyeSight(ver.2)はプリクラッシュブレーキ、全車速追従機能付クルーズコントロール、AT誤発進抑制制御、警報&お知らせ機能など、高い安全性を兼ね備えている。フロントウィンドウの内側に設置された2つのカメラが周囲状況を認識し、運転支援を実現。今年3月時点でのEyeSight(ver.2)搭載車の国内累計販売台数は、20万0272台にのぼる(自販連調べ)。スバルは運転支援システムの普及という面でも他メーカーに一歩先んじていると言えるだろう。
「はじめはEyeSightの存在を知らなかったので、付けるかどうか迷っていました」という菅田さん。「しかし、ディーラースタッフの説明を聞けばEyeSightは10万円ほどで搭載できるというじゃないですか。その機能は説明でよく聞いたので十分わかっていたつもりでしたが、実際に使ってみたらその便利さにもう手放せなくなっています。うっかり車線をハミ出しそうになるとアラームで教えてくれるし、クルーズコントロールも非常に便利。駐車時にアクセルとブレーキを踏み間違えるということも可能性はゼロではありません。イザというときの安心を買えるというのは大きいです」。運転の負担を軽減できるだけでなく、万が一の際の安心も手に入る。その効果を考えれば10万円という額は大きな追加出費ではなかった。
「EyeSightを使っている時って、人がコントロールしてくれてるって感じがします。“こんな運転してると危ないぞ”と言っているような気がするんです。障害物に対しても自然に対応してくれますね」と奥さま。
菅田さんは自らを「普通のファミリードライバー」と称すが、話を進めていくうちにクルマに対するこだわりは相当なものだということがわかった。“クルマはこうであるべき”といった強い信念が話を通じて伝わってくる。インプレッサはコンパクトなサイズながら、抜群の走行性能と安全性、そして優れた燃費を実現する。このバランスの良さが、老若男女を問わず多くの人々を魅了し、ひいては堅実な販売実績につながっているのだろう。