ドーン探査機データから小惑星ベスタの構造に新事実…地殻の厚さは80キロメートル以上

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ドーン探査機と小惑星ベスタの内部モデル
  • ドーン探査機と小惑星ベスタの内部モデル
  • ドーン探査機が撮影した小惑星ベスタ
  • 小惑星ベスタの内部構造。深成岩の地殻が80キロメートル、オリビンを多く含むマントルも80キロメートル。内部に鉄とニッケルを含む核を持つ。

2014年7月16日、スイス連邦工科大学ローザンヌ校地球惑星科学研究所は、地球と同じ層構造を持つ小惑星「ベスタ」の地殻がこれまで考えられていたものより3倍は厚いことがわかったと発表した。従来の太陽系の惑星形成モデルが改められる可能性がある。

「ベスタ」火星と木星の間に存在する、史上4番目に発見された小惑星だ。大きさは直径500キロメートルで、地球と同様に中心から外側に向かって核・マントル・地殻となる層状の構造を持つ。2007年に打ち上げられたNASAの探査機『Dawn(ドーン)』探査機は、2011年7月から2012年7月にかけて1年間、ベスタを周回する観測を行った。

スイス連邦工科大学ローザンヌ校地球惑星科学研究所(EPFL)、スイス・ベルン大学、フランス・ブルターニュ大学、アメリカ・アリゾナ大学の研究チームによるドーン探査機データの解析では、ベスタの地殻はこれまで深さ30キロメートル程度と考えられていたが、実際は80キロメートル以上に達するという。研究は、「A deep crust-mantle boundary in the asteroid 4 Vesta」のタイトルで英科学雑誌ネイチャーに7月16日付で掲載された。

ドーン探査機のデータから、小惑星ベスタの表面にはマントルの主な成分であるオリビン(カンラン石)を含む物質がほとんどないことがわかった。ベスタでは、過去に南極付近に大きな隕石衝突が2回起きたことが判明しており、衝突の際にできたクレーターは小惑星表面から80キロメートルほどの深さに達し、マントルに含まれる物質のかなりの量が表面に飛び散ったと考えられていた。隕石衝突の規模は非常に大きく、飛び散った岩石は隕石として地球にも飛来している。地球で見つかった隕石の5パーセントは、ベスタに由来するものだという。

ベスタ表面にオリビンが見つからず、また南極のクレーター付近にも見つからなかったことから、衝突した隕石はベスタの地殻を貫通しマントルに到達しなかったと考えらえる。このことから、ベスタの小惑星形成のシミュレーションから厚さ30キロメートルほどと考えられていた地殻は、厚さ80キロメートル以上ということがわかった。EPFLの図では、地殻とマントルが同じ厚さとなっているベスタの構造が示されている。

地殻は、「プルトン(深成岩)」が小惑星の表面に広がっていくことで厚くなる。ベスタにオリビンの豊富なマントルが少なく、輝石(パイロキシン)の多い外殻を持つのであれば、小惑星ベスタの形成を説明するモデルは変更を迫られることとなる。また、始原的な物質がクラウド状に集まり、熱せられ、溶けて結晶化して惑星を形成するというこれまで考えられていた地球を含む惑星の形成の基本的な理論を再考し、物質の組成に加えて軌道やサイズ、冷えるまでの時間なども考慮したより複雑なモデルを検討する必要があるという。

《秋山 文野》

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