最初にズバリ言ってしまえば、『レヴォーグ』の中で「現行型5代目『レガシィ』のボディはちょっと大きすぎるけど、ゆったりした乗り味は好み」。という人に薦められるのがこの2.0GTだ。
かつてのレガシィGT乗りにウケているという、ビルシュタインダンパーを奢るスポーツ度満点の2.0GT-Sに対して、ノーマルダンパーのこちらは同じ18インチタ イヤ、AWD方式を備えていても、走りのキャラクターは別物。
そう、乗り味は重厚かつストローク感あるゆったりしたもので、1.6GTと比べれば、走りの高級感、濃密感、静粛性の高さは圧倒的。18インチタイヤを履きながらも乗り心地は実にマイルドなのだ(段差の乗り越えでは17インチの1.6GTより 大きめのショックを伴うが)。そしてパワステの操舵感にしてもGT-Sより軽く扱いやすい設定である。
300psを誇る強力な動力性能を持つだけに、170psの1.6リットルモデルにくらべ圧倒的な速さを見せつけるのは当然として、1.6リットルモデルのリニアトロニックとは違うスポーツリニアトロニックの採用と排気量の余裕と強力なトルクの相乗効果で出足からのトルク感、そのつながりは圧巻。 出足を含め、どこから踏んでもレスポンス良く、怖いほどの加速力を見せつける。
特に”前席の”乗り心地は素晴らしく、夢のようにスムーズで快適だ。もっとずっと車格が上のプレミアムワゴンに乗っているような感覚と言っていい。ノーマルフロントシートの掛け心地そのものも文句なく、ゆったりしたサイズで背中が包み込まれるような心地よさが ある。
つまり、もっとも大人っぽいレヴォーグということになるだろう。だから現行レガシィユーザーにフィットしやすいわけだ。
この2.0GTの数少ないウイークポイントを重箱の隅をつつくように探せば、それは エアコン吹き出し口が装備されない後席の乗り心地ということになる。よりスポーティなはずのビルシュタインダンパーをおごるGT-S系のほうがむしろ後席の快適度 は上。2.0GTの場合、細かい振動や段差越えでの突き上げ感が気になりがちだったのだ。
もし、後席、あるいはレガシィ同等の広さを持つ荷室に愛犬を乗せるなら、意外だがビルシュタインダンパーをおごるGT-S系がお薦めということになる。
もっとも、試乗車はほぼ新車状態だったから、サスペンションがなじめば解消される可能性もある。この点についてはあらためて報告させていただきたい。
いずれにしても、現行レガシィからのダウンサイズにぴったりなのがこの2.0GTだと思える。
アイサイト Ver.3については、プリクラッシュブレーキの“保険的”安心感もさることながら、全速度域追従クルーズコントロールに注目だ。高速クルージング中など両足を開放してくれるためドライブの疲労度軽減に役だち、渋滞時にも便利なだけでなく、燃費低減効果も期待できるからである。アクティブレーンキープに関しては、他車のものもそうだが、まだまだ違和感があるのでボクは使わない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。