【ヤマハ トリシティ 試乗】バイク感覚で違和感なし、スポーツライディングさえ可能…和歌山利宏

モーターサイクル 新型車

ヤマハ・トリシティ 125
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昨今、特に欧州では、前輪2輪の3輪スクーターがシティコミューターとして注目を浴びている。機動性と利便性に富み、バイクに付きまとう転倒への不安を払拭できることが、その人気の理由であろう。

また、車体スペース的にハイブリッド化にも有利なため、将来性も期待されている。そんな3輪スクーターのカテゴリーに、新しくヤマハが投入したのが『トリシティ』だ。

125ccの4サイクル水冷単気筒エンジンを搭載するトリシティは、前方からは3輪であることが明らかでも、斜め後ろか真横からのフォルムはスクーターそのもの。車体サイズはこのクラス並みか、やや大きめといったところで、車重こそ同クラスの2輪スクーターより重いが、現時点における唯一の競合車であるピアッジオ『MP3』と比べ、圧倒的に軽量でコンパクトである。

跨がると、レッグシールドに隠れて前2輪であることは分からず、また足を着いてバランスを保つ必要もあり、2輪車そのものである印象で、3輪であることを忘れそうになる。新しい形態の乗り物だという違和感もない。

ライポジは、やや高めのシートから真下に脚を降ろす“ヨーロピアンスタイル”で、低めのシートから前方に足を投げ出す“ジャパニーズスタイル”ではない。足着き性は良いとは言えないが、オプションでローシート用意されていることが嬉しい。

ブレーキは、左レバーで前後輪が連動し、右レバーでフロントのみが作動。スクーターとして違和感が無く、現実的かつ安全性に富む設定である。今回の試乗では、ほとんどのケースで左レバーのみで事が足り、右レバーでのフロント単独作動の必要はほとんど感じなかった。

スロットルを開けていくと、CVT(無段変速)のトリシティは、普通のスクーターのように発進していく。扱いやすく、スムーズに伸びていくエンジン特性はストレスを感じさせない。

ただ、2輪スクーターよりは、低速で直進を保つためのステアリング操作が必要な気がしないでもない。2輪車ほど自動的にステアリングが切れる効果(セルフステア)がないのだろうが、少なくとも違和感はなく、ごく自然に対処できるはずだ。

そして、最初のコーナーに差し掛かったとき、そうした自動操舵機能の小ささのためか、上体をインに傾けるだけでは、思うように曲がらないと感じた。しかし、それも一瞬のこと。イン側に体幹を移動することで、ステアリングをコーナーに向け、それから腰で寝かし込むというスポーツライディングを実践してみると、どうだろう。

至って素直に向きを変え、しかも旋回性が高く、確実に接地感を高めていくではないか。左右のフロントタイヤで踏ん張っているという安心感も伝わってくる。ジムカーナのようなタイトターンやスラロームも、スポーツ走行として楽しめるほどである。

トリシティは、「LMW」という独自のステアリング機構を備えている。上部の一対のパラレモグラムリンクが、左右のフォークの平行を保ったままのリーンを可能とし、片持ちのダブルフォークが操舵機能を担っている。こうしたバイクのステアリング機構の特徴を展開したような独自のシステムが、バイク感覚に結びついているのであろう。

フロントの左右輪は直進時に平行でも、コーナー時に舵角が大きくなるにつれ、イン側が大きく切れてトーアウト気味になる。回転半径が小さくなるイン側を大きく切って、ニュートラル性を保つためだ。当然、リンク類の遊びも一切感じない。また、前後輪分布荷重はスポーツバイクの基本とされる50:50で、随所からスポーツハンドリング実現のための作り込みを実感させられる。

左右別個に路面から突き上げられても、さほど安定性を乱すことはなく、また、2輪車だったら躊躇するであろう斜め段差乗り上げも、難なくこなしてしまう。今回は試すことはできなかったが、濡れてグリップが低い路面でのコーナーで、フロントが滑り出しても、スリップダウンしそうにない安心感が保たれると見てよさそうだ。

こうした悪条件における安定性の高さを考えると、このトリシティが真価を発揮できるのは、欧州の荒れてグリップも良くない石畳の街中かもしれない。たとえそうであったとしても、転倒への恐れから二輪車を敬遠してきた人々にも、身近に使えるシティコミューターへの門戸を開いていることも事実である。

このトリシティは、あくまでもバイクである。3輪車感覚ではなく、あくまでもバイクとしての感覚で楽しめて、そのままでは倒れてしまうという宿命を持っていることにも変わりはない。

スポーツ性が高く、それでいて、バイクにありがちな不安感を取り払っているところが、大きな特徴であり、魅力でもある。

私が、トリシティに対して抱いていた危惧は、この3輪の乗り物に違和感があったり、逆にこれに乗り慣れた人が、普通の2輪車にうまく乗れなくなったりすることであった。でも、それは全く心配ない。ビギナーがトリシティに乗って身に付けたスポーツライディングは、そのまま普通のバイクを乗りこなすことにも生かせると思えたのである。


和歌山利宏|二輪ジャーナリスト
1954年生まれ、1975年にヤマハ発動機に入社し、様々なロードスポーツバイクの開発に携わり、テストライダーも務める。また、自らレース活動も行ない、鈴鹿8耐第5回大会では4位入賞。現在は二輪ジャーナリストとして執筆、ライディングインストラクターなど多方面で活躍中。
《和歌山 利宏》

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