【インタビュー】ケーニグセグの魅力と未来…CEOの考えるイノベーションとは

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CEOのクリスチャン・フォン・ケーニグセグ氏
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スウェーデンで独自のスポーツカー作りを続けているケーニグセグ。設立20周年となる今年、創立者で現CEOのクリスチャン・フォン・ケーニグセグ氏が来日。

同氏は「自分の手でオリジナルのスーパースポーツカーを作りたい!」という創業時の情熱はそのままに、経営者としてそれを冷静に見つめ、未来の可能性を着実に拡大してゆこうとするバランス感覚を持ち合わせていた。

V8エンジンは自社開発

----:ケーニグセグといえば、速度記録がしばしば話題となっています。そのパワーの源であるエンジンやメカニズムについて教えてください。

クリスチャン・フォン・ケーニグセグ氏(以下、ケーニグセグ):たしかに何度か速度記録を樹立していますが、これは記録へのチャレンジではなく、高速域での性能をリサーチするためにおこなっていることです。高速域でも低速域でも、ブレーキ性能やコーナリング性能、操縦性や快適性などは重要。そういったすべての要素を高い次元でバランスさせたいと考えています。ですから速度記録はその結果のひとつにすぎません。

エンジンはすべて自社設計です。サプライヤーに図面を渡してパーツを作ってもらい、自社で組み立てています。軽量高剛性、かつクリーンでパワフルなエンジンを作りたかったので、他社のブロックを流用するという選択肢はありませんでした。

またECUも自社開発したもので、回路設計もプログラミングも社内で手がけています。ハードウェアもソフトウェアも自前という自動車メーカーは珍しいのではないでしょうか。

----:内部のメカニカルパーツが精緻で美しいのは、すべで自社でディレクションしているからだったのですね。

ケーニグセグ:わたしたちは「ファベルジェのインペリアル・イースターエッグ」(ロシア皇帝のために豪華な宝飾を施し作られたイースターエッグ)と同じエキサイティングな体験を、顧客にもたらしたいと考えています。つまり外側だけでなく内側もすべてが美しいクルマを作りたい。

最初は外観に惹かれ、どこかを開けてみて「ワオ!」、さらにその内部を覗き込んで「ワオ!」…と。クルマの内部を探れば探るほど新たな驚きがもたらされる、そういうデザインを心がけています。あらゆる階層のパーツにエモーショナルなアスペクト(様相)を持たせることが顧客に驚きを与え、感情を昂ぶらせることになるのです。

私はテクノロジーとイノベーションが大好きなんです。どんなレベルに達しても、常にさらに上のレベルが発生するので追求が終わることはありません。「完璧」というものは、絶えず先へ先へと進み続けていますからね。

EVの可能性について

----:それではイノベーションについてお聞きします。今後、ハイブリッドや電気自動車(EV)を手がける計画はあるのでしょうか?

ケーニグセグ:ハイブリッド技術に興味はありますが、ファンではありません。EVとエンジン車というふたつの要素を備えるわけですから、複雑なシステムが必要。スポーツカーとしてはメカニズムが大きく、それに重すぎると考えています。

EVは大好きですよ。テスラ『モデルS』を買って乗り回しているぐらいです。EVはエンジン車と並行して進化してゆくと考えます。5年後にはエンジン車でも現在のハイブリッド車に劣らない性能を発揮できるようになるでしょうし、EVの技術もさらに発達していることでしょう。いつかはEVもエンジン車に劣らない重量や性能を実現できる日が来るかもしれません。そうなれば両方手がけることになるでしょうね。

----:そういえば以前にEVコンセプトを公開していましたね。発売予定はないのですか?

ケーニグセグ:6年前にナノフローセル社のEVリムジン『クアント』を公開しましたが、これはわたしたちがデザイン開発を受託したということと、ショーに展示したいという意向を受けたからです。ケーニグセグがEVを売ると表明したわけではありません。ただ現在も共同開発は進めていますよ。とてもエキサイティングなコンセプトですからね。

新しいエンジン技術を開発中

----:現在は新しいエンジン技術も開発中と聞いています。それは一体どんなメカニズムなのでしょうか?

ケーニグセグ:「フリーバルブ」と呼んでいるシステムのことですね。これはカムシャフトやタイミングベルトに頼らず、電子制御でバルブを開閉させる仕組みを持っています。

既存のエンジンよりも部品点数が減ることで小型軽量化に貢献します。さらに、より素早く開閉し、そのタイミングも自在にコントロールが可能。これでパワーとトルクそれに燃費が向上し、排ガスもクリーンになります。全体的に30パーセントのパフォーマンスアップとなる計画です。

----:いつごろ実用化して搭載されることになるんでしょうか?

ケーニグセグ:3~4年後に実用化する予定ですが、このシステムは当社のクルマだけのために開発しているのではありません。他の自動車メーカーにもライセンスを提供するつもりです。その利益が、わたしたちをさらに成長させることになると望みます。

将来に向けて、生産台数を増やしていきたいと考えているのです。ただ急激な成長は望みません。ステップ・バイ・ステップです。少しずつ成長して10年後にはラインナップを5車種ぐらいに増やし、20年後には年産2~300台を実現したいですね。

《古庄 速人》

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