【VW ザ・ビートルレーサー 試乗】現代に蘇った初代 ビートル GSR…中村孝仁

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VW ザ・ビートルレーサー
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その名も『ザ・ビートル・レーサー』。41年前の1973年に3500台が限定販売された『ビートルGSR』を現代に蘇らせたのがこのクルマだ。

本国では当時と同じGSRの名を使っているが、日本はザ・ビートルレーサーとしたのがこのクルマ。当時のモデルは『VW1303S』をベースにエンジンには手を加えず、車体を黄色と黒に塗り分けた限定モデルだった。

GSRとはドイツ語で“Gelb-Schwarzen-Renner”の頭文字をとったもので、意味としては黄色と黒のレーサーというベタなものである。その40年前(デビューしたのが2013年だったので)のGSRをザ・ビートルをベースに現代風にアレンジしたのがこのクルマで、メカニズムはというと『ゴルフVI』をベースにした2リットル直4ターボユニットと6速のDSGを組み合わせたものである。

また、販売台数も当時同様3500台で、日本市場はこのうち100台がデリバリーされる。勿論シリアルナンバーが付き、試乗車は3080だったから、結構後の方で作られたモデルということになる。

ザ・ビートルにはすでにターボモデルが存在するが、メカニズムは同一だからこのあたりも当時のGSRとその開発コンセプトは同じだ。ではそのターボとの違いは? となると、一つはバイキセノンヘッドライトが標準装備されること。それに235/40という太めのタイヤは、ホイール径が18インチから19インチにアップされ、これに加えて専用のシートやステアリングなどレーサーであることの証を加えたものが専用装備となる。

かつて、ポルシェ『911』はビタミン剤を飲み過ぎたビートルなどといわれたものだが、このビートルレーサーもやはりビタミン剤を飲み過ぎたようで、かなりヤンチャな走りを披露する。勿論足回りにはスポーツサスペンションが奢られているが、それは街乗りを全く阻害しない程度の快適さを誇り、一方で走りには逞しさと力強さを加えてくれている。借り出す時も「ヤンチャですよ」と一声かけられたが、個人的感想としてはおとなしいもので、もっと過激な(外装の派手さも手伝って)走りを想像していたから、ずいぶん大人な高性能を発揮するクルマと思えた。

一番気に入っているのは最近のVWのサウンドチューニングだ。人間は五感で物事を感じ取る。音は大事な要素だと思うのだが、これまでのVWときたらそのサウンドには全く無頓着だったといっても過言ではない。それが最近はどうもそれに目覚めたようで、このビートルレーサーの場合、回していくとまるでボクサーエンジンが搭載されているかのごとき音がする。それは初代ビートルのフラット4とは異なりより洗練された高性能で、音としてはむしろスバルのボクサーに近いのだが、ビートの刻み方がとても直4エンジンとは思えないような味付けをしているのが印象的だった。フラット4を意識させるあたりも、なかなかやるなぁと感じたところである。

先代となるニュービートルと比べるとサイズ的に一回りは大きくなって、室内空間やラゲッジスペースは単なるパイクカーの域から完全に使える実用車へと成長しているザ・ビートル。そこに高性能だから、嵌る人は嵌ってしまうと思う。ただし決して燃費は良くない。車載コンピューターでのアベレージ燃費は高速だけなら11km/リットルを示すが、街中だと下手をすれば7km/リットル台まで下がる。この点は同じエンジンの『ゴルフGTI』の方が良かったように思えるが…

パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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