【池原照雄の単眼複眼】大胆な「集約と集中」に動くスズキ

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次世代軽量プラットフォームを紹介する本田副社長
  • 次世代軽量プラットフォームを紹介する本田副社長
  • スズキ 四輪技術説明会 マイルドハイブリッド用のスターター・ジェネレーター
  • 乗用車向けFF車用0.8Lディーゼルエンジン
  • スズキ 常務役員 笠井公人氏

強いところにヒトとカネを集中投下

コンパクトカーと新興国市場に強みを発揮するスズキが、4輪車部門で新たな技術戦略を公表した。プラットフォーム(車台)を3タイプに集約する一方、ガソリンエンジンは1.4リットル以下に絞り込む。強い所にヒト(技術者)とカネ(開発資金)を集中投下し、商品競争力と開発スピードを徹底追求しようとの決意が伝わって来る。「選択と集中」ならぬ「集約と集中」ともいうべき大胆な舵取りに踏み出す。

一連の施策は東京で先週開いた「4輪技術説明会」で、技術部門の責任者である本田治副社長が発表した。「トップクラスの環境性能を、求めやすい価格でお届けする」(本田副社長)という商品開発方針に基づき、環境技術では新たに「マイルドハイブリッド」の導入も表明した。軽自動車などで実用化しているエネルギー回生技術の「エネチャージ」をベースに、モーターを動力アシストにも使う技術だ。

プラットフォームは、軽・A・Bのわずか3つ

こうした電動化技術とともに燃費性能を高めるために打ち出されたのがプラットフォームやエンジンの性能向上と集約策である。もともと同社のプラットフォームは現状でも4タイプと少ないが「更に整理して開発期間の短縮と開発の効率化につなげたい」(本田副社長)考えだ。軽量化も図る次世代型の導入を機に、日本だけでなくインドなどでも展開している軽自動車用のほか、AセグメントとBセグメントの計3タイプに集約する。SUVの『SX4』などに使っているCセグメント用はBと共用していく。

これら次世代プラットフォームの採用で、車両全体として最大15%の軽量化達成を目指している。同時に構造や部品配置の見直しなどにより衝突時の安全性能や、車体剛性などの向上も図る。投入時期は明らかにしていないが、来年までには導入が始まる見通し。

一方、ガソリンエンジンは熱効率などを高めることで、小排気量に集中するという“大リストラ”を断行する。熱効率(JC08モード基準)は、現在の同社の平均値である33~34%を、2020年初頭までに40%以上に引上げ、燃費性能の向上につなげる。この改良と併せてガソリンエンジンは、1.4リットル以下に集約していく方針だ。

2020年までにガソリンエンジンは1.4リットル以下に

計画では660ccの軽自動車用以外では排気量を1.0、1.2、1.4リットルの3タイプに集約する。現在、これら3タイプより大きいガソリンエンジンは1.5、1.6、2.0、2.4リットルの4タイプがあり、これらは廃止する。このほか、ディーゼルエンジンについては、新興国のコンパクトカー向けに800ccの2気筒タイプの開発に着手した。スズキは伊フィアットからディーゼルを調達しているが、並行して自社開発も行い、技術蓄積を図る。

ガソリンエンジンは排気量のダウンサイジングを図りながら、直噴式の過給エンジンも新たに開発し、大きめのモデルに搭載していく。4輪技術本部副本部長の笠井公人常務役員によると、過給機についてはターボチャージャーを採用する方針。また、エンジンの集約化は「20年までには完了したい」という。スズキの2013年のグローバル販売は270万台(前年比2%増)だった。世界でも10位にランクされる量販メーカーだが、他に例を見ない「スモール」への集中により、更なる量の成長も期待できる。

《池原照雄》

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