8耐に出場するマシンは、1000ccまでの4ストロークエンジンを搭載したいわゆる「スーパーバイク」の市販車(2気筒の場合は1200cc)と定められている。そう、8耐は市販車ベースのマシンで走るのだ。しかも、その改造範囲はかなり小さい。したがって、市販車の性能がレースの行方を左右する事にもなる。そこで、各メーカーではレースに勝つためにサーキット仕様に近い市販モデルを発売している。そこにはメーカー間の熾烈な開発競争があるのだ。
その性能は高く、各メーカーのスポーツモデルのフラッグシップに君臨している。2013年の公式予選で記録された2分7秒629(MONSTER ENERGY YAMAHA)というタイムは、スーパー耐久のポルシェ『911 GT3R]』やアウディ『R8 LMS』といったレーシングマシンに匹敵し、SUPER GT(GT300クラス)の3~4秒落ちという速さだ。8耐では、このスプリントタイムに近いペースを維持しながら8時間を走りきるというから、ライダーの体力と集中力もさることながら、マシンの性能もすさまじいと言うほかない。
では、各メーカーの代表的なマシンを紹介しよう。
まずホンダの『CBR1000RR』。ホンダは長らくV4エンジンの『RVF』で8耐に参戦し、そのあとは2気筒の『VTR』を使っていたが、現在はこの直4モデルを使用。市販状態で178PSもあり、電子制御によるハイテクも満載している。
ホンダのライバルヤマハは『YZF-R1』だ。歴史に残る名車との呼び声も高いこのマシンは他メーカーのモデルにも大きな影響を与えた。1998年に登場して以来、7代目となる現行モデルは182PSを発揮する。昨年の予選一番時計もこのマシンが記録した。
スズキ、カワサキはそれぞれ『GSX-R1000』『ZX-10R』を使用する。最高出力はそれぞれ185PSと200.1PSというモンスターマシンだ。これら4メーカーのマシンはどれも直列4気筒エンジンで、公道走行用の市販車とはいえレースで勝つことを主眼に開発されたマシンと言っても過言ではない。
実際にレースで走る車両は耐久レースに対応するために改造が施されている。通常、サーキットを走るマシンは燈火類がないが、8耐はナイトセッションのあるレースなのでヘッドライトの装着が義務付けられているのが大きな特徴だ。また、前後のタイヤも素早く交換できるように工夫をこらした改造がなされている。さらに、8耐ならではの改造として、暑さ対策のために冷却系の増強が行われる。