スズキが四輪技術説明会で披露した新しいプラットフォームとして展示したのは新しい軽自動車用で、次に発表される新型モデルから順次採用していくものだ。
従来のプラットフォームと見比べてみると、いかにも外力をしっかりと受け止めてくれそうな連続性のあるメンバーが、安定感を感じさせる。従来と比べ曲げ、ねじりの両方とも30%の剛性アップが見込める上に、車両全体で最大15%もの軽量化も見込めるというのだから、非常に効率的だ。
「軽量化できる、ということは衝突安全性でも有利ですが、鋼材の節約になるのでコスト削減にもつながるんですよ」。そう答えてくれたのはスズキ 四輪ボディー設計部長の砂野 誠氏である。まさにいいことづくめのような、新型プラットフォームだ。
しかし、従来のプラットフォームを見てみるとフロア下を流れるサイドメンバーが、いくつもの部品をつなぎ合わせた構造になっている。これは溶接しろの部分がロスとなって重量面で不利になるだけでなく、溶接部分に応力集中が起こるので剛性面でも効率が良いようには見えない。なぜこのような構造になっているのか、砂野氏に尋ねてみる。
「使っているのはハイテン鋼なんですが、それぞれの部品で強度や板厚を変えて組み合わせているんです。それと、小改良を繰り返しているプラットフォームなので、改良している部分もあります」。
高張力鋼を使っていても、その強度を変えることで衝突安全性や操縦安定性、乗り心地の各要素を高めることを狙っていたそうである。設計当時はプレス技術が今ほど高度ではなかったため小さな部品を組み合わせたとか、車種によって部品を変えて対応させる、ということではないそうだ。
新しいプラットフォームではシミュレーションを含めた設計技術が進んだことから、1つの鋼材と板厚でもサイドメンバーを一体で作れるようになったと言う。
ところで、新旧のプラットフォームを見比べてみると、リヤサスペンションが取り付けられる部分のデザインが明らかに変わっている。これは新型プラットフォームではリヤサスペンションも大幅に変更することを体現している、ということだろうか。
この質問には砂野氏も苦笑いするばかりだったが、どうやら新プラットフォームのリヤサスペンションはコンベンショナルなトレーリングリンクビームで、従来のラテラルロッドを廃したデザインのようだ。その分ピボット付近は大幅に剛性が上がっているようだし、新型車の乗り味には今まで以上に期待できそうだ。