【シボレー コルベット Z51試乗】 最大横G 加速度1.03の恐るべきコーナリングフォース…中村孝仁

試乗記 輸入車
シボレー コルベット Z51
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今回で7世代目のモデルに進化した『コルベット』。5世代目以降のモデルは世界市場を睨んだ高性能が売り物だったが、7世代目はその究極的な進化版だった。

コルベットは初代のモデルからFRという、いわゆるフロントエンジン、リアドライブの形式に拘る。ポルシェ『911』がRRという形式に拘るのと同様だ。そしてさらなる拘りは、今もなお、OHVという一見旧式とも思えるエンジン形式を持つことと、これも旧式と感じられる前後ともに横置きのリーフスプリングを使っていることなどだ。

FRへの拘りは、オンロードにおける扱い易さを重視した結果だろう。過去に何度かミッドシップ化のプロジェクトも存在したが、結局立ち消えとなっている。一方のOHVに関しては、一つにはGM内部事情があるがこれは割愛するとして、ヘッド回りをコンパクト化でき、結果としてはエンジン高を引き下げられ、フードを低めることが出来る。つまり、スタイルをよりスポーツカーらしく見せることに成功しているのだ。また、トランスバースマウントのリーフスプリングも、例えばコイルオーバーショックを使うより軽量化できることや、ロール剛性を向上させることが出来るなどのメリットがあるために使っている。

それにしても今回のモデルは、とことん突き詰めた軽量化を断行している。オールアルミ化されたフレームだけで従来よりも45kgも軽量化し、エンジンフードとルーフパネルにはカーボンファイバーを使い、さらにドア、フェンダーなどには低密度複合材料が使用されている。そしてアンダーボディパネルにはカーボンナノコンポジット材料を使うなど徹底している。シートのフレームもマグネシウム製だ。

エンジンは相変わらず6.2リットルV8と大排気量だが、低負荷時には4気筒で動く可変気筒システムや新たに直噴技術を導入するなどして、省燃費、低CO2排出を実現し、アメリカEPA燃費においてはポルシェ911やアウディ『R8』を凌ぐのだから、決してOHVの大排気量V8がメカニズムとして劣っているとは言えないのである。

今回試乗したモデルは「Z51」と呼ばれる高性能バーション。最高出力こそ僅か6psの向上でしかないが、エンジンはドライサンプ化され、ギアレシオ変更、電子制御LSDの装備、さらに強化ブレーキ、前後1サイズアップのタイヤ、そしてパフォーマンスサスペンションを採用した結果、その走りは劇的に向上している。

快適にオンロードを、という向きにはノーマルモデルで十分だ。しかし、痛快なハンドリングを欲するユーザーには是非ともZ51をお勧めする。そしてその価値は十分にある。2種用意されるシートのうち、コンペティションと名付けられた、よりサイドサポート性能の高いシートに身を沈め、プッシュボタンスタートのスターターを押すと、V8特有の空気を震わすサウンドでエンジンが目覚める。Z51はさらにパフォーマンスエクゾーストの装備で、よりダイナミックなエンジンサウンドを楽しむこともできる。

チョイスしたのはATモデル。あとで7速マニュアルと比較してみたが、ATでも十分その豪快さを楽しめる上、ステアリング操作に集中できるからむしろ安心して走ることが可能だった。ATであるがゆえのネガ要素は皆無だったと言える。新たに装備されたドライバーモードセレクターからツーリングをセレクトしてスタート。このセレクターはウェザー、エコ、ツーリング、スポーツ、そしてトラックという走行モードが用意され、ドライバーがお好みで選べるもの。

変更されるのはスロットルの反応からATのシフトモード、ステアリングの重さと反応スピード、さらにはエクゾースト、サスペンション等々、多くの要素がある。例えばツーリングからスポーツへモードを切り替えると、ステアリングは重さと切れが変わり、スロットルレスポンスが向上。サスペンションも若干硬めのセッティングになる、といった具合だ。

今回はミシュランとタイヤを共同開発し、コルベット専用を作り上げた。驚くべきは、先代に比べてリアタイヤの幅を減じているにもかかわらず、逆にトラクションは増え、横G加速度も向上している。これはシャシーセッティングとタイヤ開発の恩恵であり、実際走ってみるとその効果がいかに大きかったかがわかる。1.03G、つまり自重を超える横G加速度に耐えるクルマはそう多くはない。勿論それを公道で試すのは不可能だが、その一端は垣間見ることが出来た。ターンインから徐々にアクセルを踏み込んでいくと、ドライバーはステアリングにしがみつかないとならないほどの横Gが襲いかかるが、挙動は全く乱れない。恐るべきスーパースポーツであった。

パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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