【VW e-モビリティウィークス Vol.3】"航続距離"で戦わなかったVWのねらい

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フォルクスワーゲン・eゴルフ
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独ベルリンで開催されているe-モビリティウィークスは、フォルクスワーゲン(VW)主催による電気自動車(EV)の訴求イベントだ。”electirified!(電化せよ!)”というスローガンの下、同社が考えるEVの姿を提案する。イベントの中心となるのは『e-ゴルフ』だ。

◆航続距離では戦わない

e-ゴルフの航続距離は「最大190km」とされている(欧州仕様車)。ドイツ政府の調査によると、ドイツにおける国内ドライバーの内、80%超が1日の走行距離が50km以下であるという。VWも、この数字を根拠とし「コミューターとしての十分な航続性能」と謳っているが、競合となる日産『リーフ』の228km(JC08モード)、BMW『i3』の最大200km(メーカー公表値)と比較すると、後発にしてはいささか物足りなさを覚える。

e-ゴルフが航続距離にはこだわらなかったのはなぜか。そもそも、航続距離は搭載されるバッテリーの容量に強く依存する。e-ゴルフが搭載するバッテリーモジュールは、264個のパナソニック製リチウムイオンバッテリーセルを組み合わせた総重量318kgのものだ。

e-ゴルフは、リーフやi3と異なり、市販車ベースのEVである。現在販売されている7代目ゴルフは開発初期からEV派生を考慮していたとはいえ、プラットフォームを共用する以上、極端にEVオリエンテッドの開発はできなかった。その点、リーフやi3は、「EVのためのEV」として開発されたのだから、最もEVらしい部分である航続距離に関しては一日の長がある。

◆ソフト面での価値を提供

しかし、航続距離を必要以上に重視しなかったことで、3万4900ユーロ(約490万円)という欧州ベース価格を設定できた。これはi3の3万4950ユーロ、リーフの3万4955ユーロと比べても十分に競争力のある数字である。これには、トランス・バース・マトリックス(MQB)と呼ばれる生産方式の導入によるコスト削減が功を奏している。さらにMQBの利点として、現在約1万5000台程度のe-ゴルフ生産能力を将来的な需要増に応じて素早く増強できる強みがある。

このように、航続距離や価格といったハード面(スペック)で均衡してくると、次はソフト面での差別化が図る必要がある。例えば、ジュネーブモーターショー14で発表された『ゴルフ GTE』は、ゴルフベースのプラグ・イン・ハイブリッド(PHV)でありながら車名に"PHV"を冠すること無く、むしろ電気モーターを活かしたスポーツモデルであることをアピールしている。ここに、日本における燃費競争のような、ハード面での「泥仕合」を避けるVWのねらいが見て取れる。

現行のゴルフは、日本で輸入車初のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、各所で好評を博しているだけに、その基本性能は折り紙つきだ。e-ゴルフもゴルフ GTEも、ゴルフの派生車種であることを全面に押し出すことで、ソフト面での絶対的な安心感を供給しているのである。

《瓜生洋明》

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