ESA 欧州宇宙機関の火星探査機マーズ・エクスプレスは、2013年12月29日、火星の衛星フォボスの表面から45キロメートルを通過するフライバイを行う。これまで行ったフライバイ通過より20キロメートル以上フォボスに接近する。
火星の衛星フォボスは、およそ27×22×18キロメートルほどの大きさで、同じ火星の衛星ダイモスとは構造が異なっている。フォボスが火星の衛星となった起源はわかっておらず、小惑星が火星の重力に捉えられて衛星となった、または火星に天体が衝突した際の破片から生まれたと考えられている。小惑星に見られる、がれきを寄せ集めたようなラブルパイル構造などを確認するため、内部の構造の調査が必要だ。
マーズ・エクスプレスは2010年3月にフォボスの地表から67キロメートルをフライバイ観測している。今回はさらにそれよりも接近する。画像などの撮影ではなく、探査機が通過する際にフォボスの重力によって起きる探査機の速度の変化を記録する。この記録からフォボスの質量や密度を割り出すことを目的としている。
すでに準備として、探査機はフォボスの画像をステレオカメラで撮影し、衛星の3D画像を公開している。また、探査機の位置を正確に補足するため、欧州だけでなく世界の深宇宙通信施設は総計35時間にわたって、フォボスフライバイ前後のマーズ・エクスプレスの追跡を行う予定だ。
マーズ・エクスプレスは2003年6月に打ち上げられ、同年12月26日に火星の軌道に到着し観測活動は今年で10周年を迎える。記念の年に行われるミッションは「ほとんどフォボスに触れんばかりのところを探査機が通過する」とESAのマイケル・デニス マーズエクスプレス運用マネージャーはコメントしており、精密なミッションの成果に期待が集まっている。