今年ついに国内導入が叶い、日本の景気回復を象徴するトピックスとして多方面から注目を浴びた超高級スポーツカー、パガーニ『ウアイラ』に、高級カーオーディオ専門メーカー「BEWITH」製のオーディオシステムがオプション設定された。
◆超高級スーパースポーツとのコラボが実現
思い起こせば今年の夏、BEWITHの中島社長にインタビューしたとき「今年の東京モーターショーは楽しみにしていてくださいね」という前フリは確かにあったのだが、これは想像を超えるサプライズだった。
なぜBEWITHなのか。なぜパガーニなのか。そして、1億円オーバーのコックピットに搭載された日本発の高級カーオーディオはどんな夢を見せてくれるのか。今回は、まもなく開催される「第43回東京モーターショー2013」にこのオーディオシステムを搭載したウアイラの実車を展示するビーウィズ代表取締役の中島敏晴さんと、車両を提供するパガーニ・ジャパン代表の武井真司さんのおふたりにインタビューした。
◆ウアイラのために専用品を開発
----:今度の東京モーターショーでは、この新しいオーディオを搭載したウアイラがBEWITHさんのブースに登場することになるわけですね。正式には「BEWITH Prime Ensemble for Huayra」(BEWITH プライムアンサンブル for ウアイラ)というシステム名だそうですが、まずはそのコンセプトと概要を簡単に説明していただけますか?
中島:はい。スピーカーは純正と同じ位置に装着されるフロントドアの2ウェイで、これを小型の4チャンネルアンプとデジタルプロセッサーで駆動するシンプルなシステムです。音源には純正のUSBオーディオを標準で使用し、オプションでミラー型のメモリーオーディオプレーヤーも設定しています。車両の価値やデザインを損なわず、しかも極限まで軽量化するために、アンプとプロセッサー、スピーカーバッフルのすべてに新開発の音響専用マグネシウム合金「MAGNEOLA」(マグネオラ)を採用しました。
----:スピーカーユニットとミラー型プレーヤー以外は見たことのないユニットですね。これはすべて今回のシステムのために開発したものなんですか?
中島:スピーカーユニットとミラー型プレーヤー以外の装着機器はもちろん専用品です。ただ、これらはBEWITHの次期モデルのプロトタイプも兼ねていまして、ここで開発した技術やデザインが今後の市販製品に反映されていくことになります。
◆音を聞かせるためにイタリアへ乗り込む
----:たしか前々回(2009年)のモーターショーではSLRマクラーレンの純正オプションにBEWITHのシステムが採用されて、それも翌年以降の市販製品のプロトタイプを兼ねたものでしたね。今回も同じパターンと。
中島:はい。我々としても、こういう特別なクルマとのコラボは大きな刺激になりますし、新しいアイディアが生まれる原動力になります。たとえば「BEWITH Prime Ensemble for Huayra」はマグネシウム合金を全面的に採用することでシステムの総重量がわずか5kg程度に抑えられていますが、こういうチャレンジができるのもウアイラという舞台があればこそだと考えています。
----:なるほど。ところで中島さんは今回のコラボを実現するために、オラチオ・パガーニ社長にBEWITHの音を聴かせようとひとりでイタリアの本社へ乗り込んでいったそうですね。
中島:我々はSLRマクラーレンを通してAMGとのつながりもあったので(パガーニはAMG製エンジンを一貫して採用する)、飛び込みで営業に行ったというほどではないのですが、まあそれに近かったかもしれません。パガーニならではの素材やデザインへのこだわり、ディテールの造り込みの素晴らしさといった価値観は我々の目指すところでもあって、実際に製品を見てもらい、音を聴いてもられば、きっとわかり合えるはずだと思ったのです。
----:その成果で、まずはオラチオ社長自身のゾンダのためにBEWITHシステムを1セット納品することになったとか?
中島:はい。我々の製品の良さを良くご理解いただき、気に入っていただけました。実はウアイラには他社の純正オプションが既に決まっていて、すんなり契約というわけにはいかなかったのですが、ひとまず第一段階はクリアした手応えを感じました。
◆熱意に動かされ純正オプション採用へ働きかけ
----:で、武井さんは中島さんとは、今回のプロジェクトを始める前からお知り合いだったそうですね。
武井:そうですね。中島さんとはもともと面識はあったのですが、一緒に仕事をさせてもらうのは今回が初めてです。ひとりでコソコソとオラチオ(社長)に会いに行ってるのは知らなかったですけど(笑)。
中島:コソコソじゃないですよ(笑)。
武井:それでね、いつかパガーニの本社へ行ったときに中島さんも来ていて、そこに、その他社のオプションオーディオが付いたウアイラが置いてあったわけですよ。当然、黙って聴いちゃえ、ってことになりまして……。
----:それは興味ありますよね。
武井:そのシステムは800万円もするオプションで前評判も高かったんです。中島さんは「参りました」って感じでクルマから降りてくると思ったら「これなら勝てますよ」と。もう凄い自信だなと。そもそもひとりでスピーカーを売り込みに行くところからして、大変な情熱家じゃないですか。こういう熱意や自信がなければ良い音は生まれてこないと思うし、ハッキリと物を言う中島さんに、妙に心を動かされてしまったんです(笑)。
----:それで、まずはウアイラの日本仕様車にBEWITHシステムを純正オプション採用することになったわけですね。
武井:はい。特に日本のお客さんは目が肥えていますから、我々としてもBEWITHのような本物の高級オーディオブランドとのコラボは是非やってみたかった。実際、日本のお客さんからは「日本製の良いオーディオが取り付けられないのか」という声がずいぶんあるんです。契約のこともあって今回は日本仕様車に限っての採用になりましたが、次期モデルに関しては時間をかけてパガーニ本社の純正採用に持っていきたいと思っています。
◆モーターショーのBEWITHブースにウアイラ登場
----:オプション価格はまだ決まっていないそうですが、もうオーダーは入っているんですか?
武井:正式な受注開始はこれからですが、既に取り付け作業に入っているものが1台ありまして、他のみなさんもお付けになると思います。当然、ウアイラのお客様はホームオーディオに凝っている方が多い。家に行けば必ず大きなスピーカーがあるような……。
----:その取り付け作業中の1台が、東京モーターショーのBEWITHブースでお披露目されるわけですね。
中島:はい。音が仕上がるかどうかはギリギリのタイミングなのですが、少なくとも展示だけは間に合わせようと鋭意作業中です。それと会場にはもう1台、「BEWITH プライムアンサンブル for ウアイラ」の技術を活かした、より現実的なシステムを提案する車両も展示する予定です。
現在第1号車を製作中の「BEWITH Prime Ensemble for Huayra」は、インタビューでも触れたとおり「第43回東京モーターショー2013」のBEWITHブースに展示される予定だ。
ウアイラの実車を間近に見られる貴重な機会でもあるので、会場を訪れた際はBEWITHブースにも足を運んでいただきたい。次回は東京モータショーのBEWITHブースを訪問し、搭載コンポーネントの詳しい紹介と試聴インプレッション、そしてこのシステムに採用された技術を受け継ぐBEWITHの次期オーディオ製品のラインアップをご紹介したい。