ダイハツ タント に学ぶ、造形を超える広義のデザイン

ダイハツの『タント』が「2013年度グッドデザイン大賞」の候補10に選ばれた。東京ミッドタウンで開催される「G展」において、ダイハツの『タント』のチーフデザイナーを務めた岩村卓氏に話を聞くことができた。

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ダイハツ工業 デザイン部 主査 岩村卓氏
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  • 「グッドデザイン大賞」の投票の様子
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  • 『タント』と同様に、「グッドデザイン金賞」をトヨタの『i-ROAD』も受賞。「グッドデザイン・ベスト100」にも選出されている。
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2013年10月1日に「2013年度グッドデザイン賞」が発表された。「グッドデザイン・ベスト100」の中に、自動車では、トヨタの超小型2人乗り電気自動車『i-ROAD』、スズキの軽トラック『キャリイ』、VWの『ゴルフ』、ホンダの『フィット』、ダイハツの『タント』が選出された。

さらにダイハツの『タント』とVWの『ゴルフ』は、「2013年度グッドデザイン大賞」の候補10に選ばれた。そして、候補となった10のプロダクトは、10月30日より11月4日にかけて東京ミッドタウンで開催される「G展」において大賞を決める投票が来場者や審査員などによって行われた。

今回、その「G展」において、タントのチーフデザイナーを務めた岩村卓氏に話を聞くことができた。

お父さんもターゲット

岩村氏(以下敬称略):嬉しいですね。候補は予想外だったので。取れたらいいね、くらいの感じでしたから。

---:タントのデザインには、どのような狙いがあったのでしょうか。

岩村:“家族みんなの元気空間”と呼んでいるように、タントは歴代、家族のためのクルマでした。子育ての乳母車のようなもので、“赤ちゃんがいれば必ず必要だよね”というようなポジションのクルマに育ってくれました。

今回は、それプラス、お父さんまでに領域を広げたいなという狙いでデザインしました。実際に、2代目は可愛すぎて、お父さんには恥ずかしいなという声もありましたので。あまり可愛くなりすぎないようにと。もう少し、中性的なところに持って行きました。初代、2代目はポジションをしっかりと作るということで、そういう個性を付与していたところがあったのですが、ここまで認知度が上がってきますと、より幅広いお客様へというところもありました。

スーパーハイトというジャンルを立ち上げたタント

「ポジションを獲得する」と岩村氏が言うように、タント以前は、子育て向けに特化したスーパーハイワゴンというジャンルは存在しなかった。

そこをタントが先駆者として、マーケットを生み出したのだ。そして、現在ではスズキの『スペーシア』やホンダの『N BOX』のようなライバルも誕生し、販売合戦が繰り広げられるほどの人気ジャンルに成長した。その競争を勝ち抜くため、タントは、より広いユーザーに受け入れられるデザインに方向性を変化させた。しかし、本来のタントが備えていた資質は、決して変化させないとも岩村氏は言う。

堂々と理想を形に

岩村:やはり商品ですので、“新しいものはこれだけ変わりました”とすればサービストークがやりやすいのですけれど、そこにお客さんの姿が見えているのか? と思うのです。特に、タントのジャンルはうちが作ったところなので、変えるがために、ヘンなところに行くべきではないと。堂々と自分たちの思うところを作り続けようと思いました。

今回のグッドデザイン大賞候補は、初代、2代目、3代目のトータルとして選んでいただけたのではないかなと考えています。今回のタントは私自身が頑張りましたけれど、ダイハツの先輩たちが最初に、このようなジャンルを作って、それを確実に進歩させてきたというのが、審査委員の方に響いたのではないでしょうか。

広義のデザインが評価

確かにグッドデザインは、“くらしを、産業を、そして社会全体を豊かに導くであろう「よいデザイン」を選び出す”ことが目的とされている。見た目の良い悪いだけでなく、より広い意味でデザインを捉えているのだ。そうしたとき、タントのデザイン(主にパッケージングやコンセプトの妙と言った方がいいだろう)が「子育てのツールとしてのスーパーハイトワゴン」というジャンルを切り拓いてきたという功績は大きい。

「G展」の終了後となる11月7日に「2013年度グッドデザイン大賞」は「該当なし」と発表された。タントは大賞こそ逃したが、来場者などによる投票では『googleマップ』『ロケット(イプシロン)』に続く3位を獲得。また、別途に「グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)」を獲得。高い評価を得ることに成功したようだ。

現在、軽自動車の人気モデルは、どれもコンスタントに月販1万台を突破しており、日本の新車販売における重要なポジションを担う存在だ。そして、タントの今回の「G展」における高い評価は、軽自動車が量だけでなく、質的な面でも大きな成長を果たしている結果のひとつと見ていいのではないだろうか。

《鈴木ケンイチ》

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