【smart G-BOOK Ver.2 インプレ前編】トヨタ謹製のナビアプリ、プローブに加えて音声認識で機能アップ

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smart G-BOOK Ver.2
  • smart G-BOOK Ver.2
  • ルートガイド中の画面。本アプリは縦画面でも横画面でも違和感なく使える。
  • 起動すると表示されるメインメニュー。カーナビとして使うには「ナビゲーション」ボタンをタップする。メインメニューにあるほとんどの機能はナビ画面からでも直接呼び出せる。
  • データ量を絞らなければならない通信型なので、地図はややあっさりした印象。それでもランドマークは3Dで表現されるなどこだわりも見える。
  • 地図のスケールはなんと10メートルまであり、40~10メートルでは主要な建物はこのように立体的に表現される。
  • 「目的地検索」メニュー。最近ではジャンル検索と周辺検索を1つにしているカーナビが多いが、このアプリでは別々になっている。
  • 施設名検索などでの文字入力はiPhoneのキーボードを使用する。したがってiPhoneの音声入力を使用することも可能だ。
  • 目的地が見つかったら地図で確認し、チェッカーフラッグのアイコンをタップするとルート検索が行われる。

前身のアプリである「G-BOOK全力案内ナビ」から大幅にリニューアルし、生まれ変わった「smart G-BOOK」。新たにトヨタ独自の渋滞情報「Tプローブ交通情報」や音声認識サービス「エージェント」に対応し、豊富だった機能がさらに強化された。ほかのカーナビアプリとは一線を画す個性派のアプリが、さらに独自路線の進化を遂げたといえる。

◆カーナビアプリとしての実力を大幅アップ

スマホ向けのカーナビアプリは数多くあるが、このsmart G-BOOKはほかのアプリとはまったく異なる開発背景を持つ異端児といっていいだろう。そもそもG-BOOKとは、トヨタの自動車に標準装備、あるいはオプションとして搭載されるテレマティクスサービスだ。幅広い様々な情報をドライバーに提供するためのもので、少なくともスタートした当初はカーナビ機能は多くの情報コンテンツのひとつという位置づけだった。

現在では実質的にカーナビ機能がG-BOOKの実体といってもいいほどになっているが、あくまで様々な情報コンテンツを提供するテレマティクスサービスとしての体は崩していない。なぜこのことを最初に説明したかというと、そのほうがこのsmart G-BOOKアプリを理解しやすいからだ。このアプリを起動すると、地図ではなくアイコンの並んだメインメニューが表示される。それを見て「あれ、カーナビじゃないの」と思う人が多いかもしれないが、それは上記のような理由、つまりテレマティクスアプリであって純然たるカーナビアプリではないからだ。

もっとも、実質的にはsmart G-BOOKはカーナビアプリそのものと考えて問題ない。そして、カーナビアプリとして評価した場合、非常に魅力的だといえる。本アプリの前身といえる「G-BOOK全力案内ナビ」からアプリ名を変えて生まれ変わったが、カーナビアプリとして進化しただけでなく、独自の渋滞情報「Tプローブ交通情報」を新たに搭載。トヨタ純正ナビと同一の渋滞回避ルート検索もできるようになった。従来からの「オペレーターサービス」とともに、ほかのアプリベンダーが逆立ちしても真似のできない機能といえる。さらに独自のボイスコマンド「エージェント」の採用という機能強化も行っており、見どころは数多い。

なお、本アプリはiOS用、Android用があるが、どちらも機能やインターフェース、価格はまったく同じだ。iOSは4.3以降、Androidは2.3、4.0、4.1が対応となっている。価格は年額2,500円だが、いくつかの機能は無料で使用できる。さらに、現在は先着2万名(iOS、Android各1万名ずつ)限定で年額1,000円のキャンペーンを行っており、これはとりあえず買っておけ、と言いたくなるほどのバーゲンプライスだ。

◆通信型ナビのメリットを最大限に生かし高度な機能を実現

カーナビアプリとしてみた場合、smart G-BOOKはスマートフォンならではの通信環境を活かした通信ナビだ。最近のカーナビアプリは端末側に全てのデータをインストールするスタンドアロンタイプが増えているが、smart G-BOOKはそうではなく、地図データも目的地データも全てサーバー上にある。このタイプのカーナビアプリ全般に言えるメリット、デメリットとしては、いつでも最新のデータを使えること、アプリの容量が少ないので端末のストレージを圧迫することがなく、インストールに要する時間も短いこと、端末の能力に依存せずに高度な機能を搭載できることなどがメリット。反対に圏外など通信できない環境では使用できないこと、通信しながらの処理となるため操作に対してレスポンスが鈍いことがデメリットだ。

レスポンスについては、アプリを起動するとメインメニューが表示されるまでに少し時間がかかり、メインメニューの「ナビゲーション」をタップしてナビ機能を立ち上げるまでにまた時間がかかる。この時点で少し心配になるが、実はそのあとはどんな操作をしてもレスポンスは優れており、引っかかるような動きをすることはない。本当に通信ナビかと思うほどだが、通信を遮断しながら操作して調べてみると、どうやら非常にうまいやり方をしているようだ。

例えば、通信ナビを使っていて誰もが経験するのが地図のスクロールでカクッと止まってしまうことだが、smart G-BOOKにはそれがない。通信できない状態でもどこまでも軽快にスクロールできるのだ。ただし、地図の表示がスカスカになる。どうやら現在地付近の荒い地図を端末に保存することで、カクッとならないように工夫しているらしい。これはGoogleマップなどと同じやり方だ。

通信環境やサーバーの状態によって待ち時間が発生することもあるが、目的地検索、ルート検索も非常に高速で、全体としては通信ナビの弱点をうまく補い、充実した渋滞関連機能などメリットだけを引き出すようにしている。

◆サーバーでのルート探索は渋滞考慮対応でしかも高速

実際に使いながら各機能をチェックしていこう。まず目的地の検索をしてみる。施設名、ジャンル検索、周辺検索などメニューは一般的だ。文字入力はiPhoneの標準のキーボードを使用するので違和感がなく、iPhoneの音声入力を使うこともできる。また、目的地検索では本アプリの目玉機能となっている「エージェント」が使える。これはあとで詳しく紹介しよう。

目的地が見つかったら次はルート検索だ。この機能は本格的で、高速な5ルート同時検索が可能となっている。まず最初に推奨ルートが表示され、気に入らなければボタンをタップすると「推奨」、「一般」、「道幅」、「距離」、「別ルート」の5本のルートが同時に表示される。それぞれの距離、所要時間、高速道路料金も表示されるのでルート選択の参考になるだろう。

また、ルートを編集する機能もあり、経由地を簡単に追加できるほか、渋滞を考慮したルート検索をするかどうかも設定できる。ルート検索もサーバーで行われるが、ルートが表示されるまでの時間は非常に短い。スタンドアロンタイプのカーナビソフトと比べても互角か、遠方のルート検索ならむしろ高速といえる。

◆使える音声認識「エージェント」は、自然な日本語を理解して目的地を検索

本アプリの目玉機能となっている「エージェント」。音声認識によるボイスコマンド機能だ。最近は同様の機能を搭載したカーナビアプリが増えているが、エージェントの特徴は用途をほぼ目的地検索に限定していることだ。「ほぼ」というのは、ヘルプの使用例に「お腹が痛い」、「スポーツニュースを教えて」などがあるため。ユニークな使い方もできるわけだが、いずれにしても地図の縮尺を変えるなどのナビ操作をボイスコマンドで行うことはできない。

音声認識の方法にも特徴があって、これも通信に頼っている。つまりこちらが喋った言葉をサーバーに送り、サーバーで認識をしている。そのため認識にはやや時間がかかる。このように用途が限定され、動作が遅い音声認識なのだが、その代わりに認識率の高さと言葉の解釈は極めて高いレベルにある。

端末に顔をあまり近づけず、ごく普通にしゃべっても非常に高い確率で認識する。音声認識向けに意識して滑舌良く話す必要はない。また、自然な日本語によるコマンドが可能となっていて、「近くのラーメン屋」「一番近い駐車場」「お寿司が食べたい」「郵便局はどこ?」といった聞き方でも正しく認識できた。ただ、G-BOOKのWEBサイトでは「予算は5000円以内で」といった絞り込みもできることになっているが、そこまで期待しない方がいい。予算による絞り込みは可能ではあっても検索結果に不満が残るし、それ以外の条件での絞り込みも思いつく限りやってみたが、あまりうまくいかなかった。

音声を認識するとその通りに目的地を検索し、候補が一覧表示される。そこから目的地を選べば営業時間などの詳細データが表示され、目的地設定できるだけでなく、電話をかけることも可能だ。あまり複雑な検索条件を指定することはできないが、それでもこのエージェント機能は非常に実用的で、実際に使える音声認識だと感じだ。

《山田正昭》

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