【マツダ アテンザ 試乗】スムーズで活きの良い「G」、底からわき出るトルクが味わえる「D」…松下宏

試乗記 国産車
マツダ アテンザ
  • マツダ アテンザ
  • マツダ アテンザ
  • マツダ アテンザ
  • マツダ アテンザ
  • マツダ アテンザ
  • マツダ アテンザ
  • マツダ アテンザ
  • マツダ アテンザ

マツダのフラッグシップモデルとして登場した『アテンザ』は、いろいろな特徴や長所と短所を合わせ持つクルマだ。

最初に感じたのはボディの大きさだ。特にセダンは大きすぎる感じだ。一般的には、セダンを基本にボディやホイールベースを拡大するなどしてワゴンを作るのだが、アテンザではワゴンよりもセダンの方が長いホイールベースと大きなボディを持つ。常識的には考えられないクルマ作りだ。

1840mmの全幅はセダン/ワゴンとも共通だが、国内向けを考えたら、1800mm以内に抑えてほしかった。日本では一部の駐車場インフラが1800mmで作られているし、取り回しを考えても適度な全幅やホイールベースが良い。

大柄なボディを持つことで、外観デザインは伸び伸びしたものになった。サイズの余裕がデザイナーの制約を少なくし、抑揚のある面で構成された外観デザインが作られている。個人的には大きな五角形グリルは好みではないが、これが今のマツダデザインである。

ボディの大きさは室内空間にもつながっている。ワゴンでも十分な居住空間とラゲッジスペースを持つのに、セダンの室内は更に広いのだから、後席の広さはショーファー・ドリブンとして使えるくらいである。

ガソリンエンジンは2.0リットルと2.5リットルの2機種がある。いずれもSKYACTIV技術を取り入れていて、直噴仕様やi-stopの採用で動力性能を確保しながら優れた燃費も実現している。

2.0リットル車はワゴンの20Sに試乗した。114kW/198N・mの動力性能を発揮するエンジンだが、ワゴンボディも1450kgの重量があるので、とても良く走るという感じではない。でも動力性能に不満を感じるような感じでもなく、まあ必要十分といった感じの動力性能である。

今回のアテンザから搭載が始まった2.5リットルエンジンの搭載車は、セダンの25S Lパッケージに試乗した。こちらは138kW/250N・mの動力性能を発揮し、動力性能の余裕がはっきりと感じられる。

装備なども含めて重量はやや重くなるが、それでも重量増よりも動力性能の向上分の方が大きいので、走りは格段に良くなる。

吹き上がりのスムーズさにしても、排気量の拡大によるトルク感にしても、2.5リットル車はとても良く走るという印象になる。アテンザのボディには2.5リットルの方が合っている。

アテンザには2.2リットルのクリーンディーゼルも搭載されている。SUVのCX-5だけでなくセダン/ワゴンのアテンザでも、ディーゼル車が高い販売比率を占め、初期受注では76%がディーゼル車だったというからすごい。

ディーゼルはワゴンの「XD」と「XD Lパッケージ」の2台に試乗した。2.2リットルのSKYACTIV-Dが発生する動力性能は、パワーは129kWながらトルクは420N・mと圧倒的な性能を持つ。

始動後のアイドリング回転数は800回転ほどだが、ガソリン車とは明確に異なるエンジン音が聞こえる。最新のクリーンディーゼルは燃料を高圧で噴射するためどうしてもエンジン音が大きくなりがちだ。発進し、低速でゆっくり走っているときまではディーゼル車であることが分かる。

低速域から余裕のトルクを感じさせるから、市街地などではほとんどアクセルを踏み込まなくても良いという感じだ。420N・mのトルクは4リットルクラスのV型8気筒エンジン並みのもので、ゆったりした余裕の走りが得られる。

高速クルージングに入ると、時速80kmでの回転数は1500回転を切ったあたり。時速100kmでも1800回転弱くらいで回っている。この速度域ではロードノイズや風切り音などもあるので、ディーゼルの騒音はまったく気にならなくなる。防音対策も入念に行われている。

試乗車にはオプションのBOSEサウンドシステムが装備されていて、これには心地よいエンジンサウンドを演出する機能も備えられている。余分なノイズをキャンセルするだけでなく、エンジン音を補完する音を積極的にスピーカーから出す仕組みだ。

高速道路での追い越し加速などでアクセルを踏み込むと、ガソリン車並みにスムーズとまでは言えないまでも、ディーゼルとは思えないスムーズさでエンジンが吹き上がり、それに伴ってトルクが盛り上がってくる。

最大トルクはわずか2000回転で発生する数字だから、ちょっとアクセルを踏めばすぐに最大トルクといった感じである。この力強さを考えると、ディーゼルを選ぶ意味は十分にある。

ガソリン、ディーゼルとも、アイドリングストップ機構のi-stopは割と良く止まるようになった。これは減速時にエネルギーを電気に変えてため込むi-ELOOPを採用したことなどが貢献している。大きな容量の電気を一気に出し入れでき、それがモニターに表示される。

またSKYACTIVの6速ATもダイレクト感があって良い。マニュアル車の設定もあるが、あえてマニュアルを選ぶまでもないように思う。

新型アテンザでは、ボディだけでなくタイヤも大きくなった。標準グレードで17インチ、上級グレードには19インチのタイヤが装着されている。

さすがに19インチは乗り心地が相当に硬くて過剰な印象。今回の試乗コースにはマンホールの出っ張っている区間があって、そこを走るときなどは相当にきつい突き上げを感じることになった。上級セダンとしてはもっと快適性の高い仕様が求められるのではないか。乗り心地の面から考えたら17インチタイヤ装着車の方がお勧めだ。

アテンザの価格はセダンとワゴンが対応するグレード同士で同価格。普通ならワゴンの方が高いのだが、今回のアテンザではセダンに大きなボディが与えられたので、同価格になったようだ。

またディーゼルとガソリンの価格差は40万円で、補助金を含めると実質的には約半分ほどの差になる。買った後の維持費の安さも含めて考えると、経済性の差は相当に小さい。

距離を走る人ならディーゼルが有利で、総合的な快適性などを考えたら、ガソリン車が有利といった感じである。

新型アテンザでは自動ブレーキのスマート・シティ・ブレーキ・サポートなど、最新の安全装備をセットにしたセーフティ・パッケージがXD Lパッケージには標準で、XDには15万円ほどのオプションで用意されている。

オプション装着する場合にはディスチャージ・パッケージとセットでないと買えないので20万円以上の予算が必要になるが、アテンザを買うなら是非とも装着したい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集