【GARMIN GPSMAP 62SCJ インプレ後編】プロ機として必要される機能を磨き抜いたハンディGPS

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GPSを受信しにくい建物の影に入り、スマートフォンでGPS衛星の受信状況をチェック。3機しか衛星を捉えていない。一応測位はできるが誤差はかなり大きいはずだ。
  • GPSを受信しにくい建物の影に入り、スマートフォンでGPS衛星の受信状況をチェック。3機しか衛星を捉えていない。一応測位はできるが誤差はかなり大きいはずだ。
  • 同じ場所で本機の衛星受信状況を見ると、9機の衛星を捉えている。測位誤差は8メートルと一桁に収まっている。驚くべき受信性能だ。
  • 上空が開けた場所ならこのように受信状況は非常に良くなり、誤差は3メートル程度となる。ピンポイントといっていい正確な測位が可能だ。
  • 「平均位置測定」機能を使用。時間はかかるが非常に正確な測位をした上でポイントを登録することができる。
  • 高度の変化のグラフ。スケールが自動で変化し、高度の変化量が大きい時は1マスの高度差が大きくなる。
  • 気圧高度計の設定画面。自動校正を有効にしておくとGPSから割り出した高度から誤差を修正してくれる。
  • コンパスの画面。本体を縦にしても正確な方角を示し続ける。
  • トリップコンピュータの画面。高度と移動量、日没、あるいは日の出までの時間は固定で、その他のデータはカスタマイズ可能。データ数を2項目に減らして大きく表示することもできる。

GARMINのプロフェッショナル仕様ハンディGPS『GPSMAP 62SCJ』のインプレッションの後編をお届けする。前編で概要を紹介したので、ここからは実際に使ってみてのインプレッションも交えながら、各機能について更に詳しく紹介していこう。

◆突き出たGPSアンテナは伊達じゃない

まず大きなGPSアンテナの威力について。山岳地では空がほとんど見えないほど木が生い茂っていたり、谷の底から見える空が非常に狭かったりと、意外と上空が開けていない状況が多い。レジャー向けでなくプロ仕様ということも考えれば雨中での使用の機会も多いはずで、分厚い雲による電波の減衰も考えられる。

そこで、敢えて建物の影に入ったりしてGPSの受信状況をスマートフォンと比較してみた。厳密な比較テストとはいえない簡易なものだが、スマートフォンとの受信性能の違いは明らか。GPSの衛星をスマートフォンではほとんど1つも捉えられない状況でも、本機では10近い衛星を捉えることもあった。屋内でさえ、窓に近いところなら本機はかなり高い確率で衛星を捉える。

逆に上空が開けた条件のいい場所では、本機の測位誤差は3メートル程度と驚異的な精度を示してくれる。ちなみに、最近のスマートフォンは極めて正確な測位をするが、それは3Gネットワークや近くのWi-Fiの電波を加味して総合的に測位する技術が使われているため。したがって山岳地ではスマートフォンの測位精度はガクッと落ちる。

本機は測位誤差をできるだけ少なくするこだわりの機能も搭載されている。ポイント登録をするときに利用できる「平均位置測定」がそれだ。この機能は、ポイント登録をする際にその位置の測位を何度も繰り返し、平均を算出する機能。平均をとることで誤差が相殺され、より正確な測位が可能となるのだ。街中で建物などの場所を登録するのであれば多少の誤差は無視できるが、目印のない山中では大きな誤差は許されない。そんな時に威力を発揮してくれる機能だ。

◆GPS以外にもさまざまな機能で山間部での移動を支援

本機にはGPSのほかに気圧高度計と電子コンパスが搭載されている。高度に関してはGPSによる測位と地図データから割り出すこともできるわけだが、まったく異なる測定方法である気圧高度計を組み合わせることで、より正確な測定ができる。高度の変化をグラフ表示することも可能だ。

電子コンパスは3軸タイプを採用しており、本体の向きに関係なく正確な方角を表示できる。スマートフォンにも電子コンパスが搭載されているが、2軸タイプのため、本体を水平に持たなければ正しい表示にならない。それに比べて3軸タイプは格段に使いやすく、精度も安定している。

ちなみに、電子コンパスはGPSの弱点である「移動しないと方向がわからない」という特性をフォローするために搭載されている。ポータブルタイプのカーナビを徒歩で使ったことのある人なら、まったく方向が間違っていたり、地図がクルクルと回ってしまうことを経験した人も多いだろう。本機の場合は、電子コンパスの画面で方角を確認できるだけでなく、地図表示も常に正しい方角を示す。試しに移動しないでその場で体の向きを変えてみると、本体の回転に合わせて地図が反対方向に回転し、正しい方角を維持した。

このように、GPS、気圧高度計、電子コンパスという3つのセンサーを持つ本機は、これらのデータを組み合わせてさまざまな機能を実現している。それを手っ取り早く実感できるのがトリップコンピューター機能だ。移動速度や移動時間、現在の高度、日没までの時間などを1画面で表示してくれる。表示するデータを2つに絞って大きく表示することもでき、この表示だと歩いている時でもチラッと見るだけで読み取れる。もちろん、表示するデータはカスタマイズ可能だ。

◆地図をインストールすればカーナビとしても使える

かつてのハンディGPSは現在地を側位することが主な役割だったが、現在ではむしろ目的地までのガイド機能が最も需要な機能といえるだろう。本機は2000ヵ所のウェイポイント(カーナビの目的地登録に相当)と200本のルートを登録できる。ウェイポイントとルートはパソコンソフト「ベースキャンプ」で作成して本機に転送することも可能だ。ベースキャンプはGARMINの正規代理店であるいいよねっとのWebサイトからダウンロードできる。また、ルートは出発地と目的地を逆転させることが可能だ。

ルートを作らずに、目的地だけを指定してガイドさせることも可能だ。その場合は、目的地の方角と直線距離を表示するようになっている。ただし、ガイド機能は目的に応じて設定を変更することができ、車両選択を徒歩から自転車、あるいは自動車に変更し、マップマッチを有効にすれば、自転車ナビ、カーナビとして使うこともできる。プリインストールされている20万分の1の地図では実用的にちょっと厳しいが、別売の日本詳細道路図「シティナビゲーター」をインストールすれば、十分に実用に耐えるカーナビになる。

もっとも、最近ではカーナビが非常に安価になっているので、実用面では徒歩ナビ、自転車ナビとして使うほうが利用価値が高いだろう。カーナビのポータブルタイプは徒歩ナビとして使える製品であっても、使い勝手があまりよくない。それに対して本機はもともと徒歩で使うものなので、電子コンパスによって正しい方向を常に示す快適さを享受することができる。

なお、本機にはワイヤレス通信機能があり、ウェイポイントやルートをほかのGPSMAPシリーズ製品はもちろん、Oregonシリーズなど通信機能を持ったGARMINのハンディGPSと送受信できる。これはパーティを組んで登山やトレッキングをするときに非常に便利な機能だ。

◆カメラで写真撮影してポイント登録

紹介するのが最後になってしまったが、本機が新しく搭載した目玉機能がカメラによる撮影機能だ。ズームもLEDフラッシュもないシンプルなカメラだが、このカメラによって本機に新しい使い方が広がったといっていい。ちなみに、本機と同時期に発売されたOregon 550TCにもカメラ機能が搭載されたが、その解像度が3.0Mピクセルであるのに対して本機は5.0Mピクセル。最近のデジカメとは比べるべくもないが、最上位機種としての差別化はなされているようだ。

画質について先に報告しておくと、残念ながらあまり評価できるものではなかった。前述のオレゴン550TCと比較しても、画素数は本機が上なのに、画質では負けていると言わざるをえない。色が緑色っぽく不自然で、空など明るい部分には青いノイズが出る。やはり場所を記録するためのカメラであり、記念撮影は別のカメラを使ったほうがよさそうだ。

このカメラをどのように使うかはもちろんユーザーの自由だが、想定されている使い方はやはり、ポイント登録のためと考えていいだろう。ただ写真を撮影するだけで、その場所のデータが画像ファイルに埋め込まれ、同時に本機の地図画面にも写真のアイコンが表示される。これは実用的でもあるし、使って楽しい機能ともいえる。歩きながら写真を取っていくと地図の移動軌跡上に写真が増えていき、もっとどんどん撮ってやろうという気にさせられる。

もちろん、写真を表示してその撮影場所へガイドをさせることも可能だ。また、写真データはパソコンソフト「ベースキャンプ」に転送すれば、パソコン上で地図に写真を配置した状態で表示することができる。また、Google+のアルバムにアップロードすればGoogleマップ上に写真を撮影した位置を表示することも可能だ。

《山田正昭》

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