スマホがあれば実用的なカーナビとして十分使える。それはもう一部のデジタルガジェットマニアだけでなく、誰もが知る常識となってきた。
スマホの普及やそれに伴うパケット定額の一般化が背景にあるが、ここで紹介する「NAVIelite」のような優秀なナビアプリが登場したことも、「スマホでカーナビ」が一般化した原動力といえる。
◆純正カーナビと同じ使い心地
すっかり定番アプリとなっているNAVIeliteだが、その概略を改めて紹介しておこう。NAVIeliteはアイシンAWが販売するカーナビアプリ。アイシンといえばオートマチックトランスミッションのイメージが強いが、多くの自動車メーカーに純正カーナビを供給する世界有数のカーナビメーカーでもある。そのアイシンAWが高機能な純正カーナビのインターフェース、性能、使い心地をほとんど損なうことなく、スマートフォンアプリに作り替えたのがNAVIeliteだ。
機能はごく普通のカーナビと全く同じと考えてよく、特にトヨタの純正ナビを使ったことがある人なら、それと全く同じといっても過言ではないほど。流暢な音声案内、交差点の拡大図、ジャンクションやインターチェンジのイラスト表示といった標準的な機能はもちろん、渋滞情報とそれに応じた渋滞回避ルート検索機能も備えている。
カーナビ専用機と比べて劣っているのは、当然だが画面が小さいこと、測位の方法がGPSのみで車速信号などは利用していないこと。トンネルなどに入れば自車位置を見失ってしまう。逆に優れているのは、2ヶ月に1度の頻度で地図データが更新されること。アプリそのものも更新され、機能が増えたり使いにくい部分が改良されることだ。
◆iOS版に加え、春にはAndroid版も登場
2011年1月にNAVIeliteが登場した時のインパクトはきわめて大きかった。それまでiPhone向けのカーナビアプリはかなり機能を絞り込んだ簡易なものしか無く、携帯電話用のカーナビアプリにも劣る状況だったが、そこに突然の黒船来航とばかりに登場したのだ。iPhoneや携帯電話向けのカーナビアプリはもちろん、数万円で販売されているPNDにも全く引けをとらない機能や完成度は、多くのiPhoneユーザーを驚かせた。
価格はiPhoneアプリとしては非常に高価といえる年額3,800円で、この面でもiPhoneユーザーを驚かせた。しかし、それでもトップセールスランキングの常連となるほど大人気となったことが、NAVIeliteの凄さといえる。
詳しい紹介に入る前に、NAVIeliteのラインナップを整理しておこう。iPhoneアプリとしてスタートしたNAVIeliteは、現在ではiPhone版が2本、android向けが1本販売されている。iPhone版は3800円/年の「NAVIeliteカーナビ 渋滞情報プラス」と、2800円/年の「NAVIelite mini カーナビ」がある。違いは、mini版には渋滞情報と全国詳細地図がないといった程度。
この2本に加えて、今年3月にはAndroid版の「NAVIeliteカーナビ 渋滞情報プラス」も発売された。価格はiPhone版と同じ3,800円/年。機能も基本的に同じと考えていい。
◆ユーザーの声に応えて着々と改良
スマートフォンのアプリがバージョンアップするのは当たり前のことだが、NAVIeliteではそれがかなりドラスティックだ。2ヶ月ごとに地図データが更新されるが、その際にアプリ本体もバージョンアップし、不具合の修正はもちろん、ほぼ毎回、何らかの機能が追加される。
これまでのバージョンアップでは、操作方法の改善やメモリ地点のバックアップ機能の追加などがあった。最近の例では、2月と4月のバージョンアップでそれぞれ目的地検索にYahoo!JAPAN、食べログによる検索機能が追加されている。また、6月に実施された直近のバージョンアップでは、トヨタが純正オプションとして発売した「スマホナビ対応ディスプレイ」に対応した。このディスプレイにiPhoneを接続すると、NAVIeliteの画面が7インチの大画面に表示され、タッチ操作もできる。
ユニークなスマホ対応ディスプレイは別として、ほかの変更や機能の追加は、いずれもユーザーの声を素早く拾い上げた結果といえる。奇抜な機能を押し付けるのではなく、すぐに役立つ機能を追加して着実に完成度を高めているのだ。発売直後のNAVIeliteは画期的な性能を持つ反面、エキセントリックともいうべきアクの強さがあった。例えば、自由に通信ができるiPhoneアプリでありながら、渋滞情報の取得以外で通信を使わない。目的地検索もメモリ地点の登録もスタンドアロンでネットとつながらないため、歯痒い思いをさせられることがあった。
◆カーナビ専用アプリならではの“ブレのなさ”
しかし、こうした弱点はある面を除いて、これまでのバージョンアップでほとんど全て解消されている。あくまである面を除いてだが、最新版のNAVIeliteは本当に死角のないバランスのとれたアプリに成長している。
「ある面」とは何かというと、徒歩ナビとして使えないこと、縦画面に対応しないことだ。どちらもほかのナビアプリなら当然のこととしてできるのだが、NAVIeliteではできないし、できるようにしようという気配もない。あくまでカーナビであり、また、純正ナビと同じインターフェースを崩さない、というスタンスなのだ。これがいいことか悪いことかは別にして、ブレがないということは確実に言える。我が道を突き進んでいるナビアプリなのだ。
◆検索機能はいまや得意科目
数日間にわたり、改めてNAVIeliteを使ってみた。まず注目すべき目的地検索。かつては収録データからの検索のみだったが、今ではクロスリンク機能により、Yahoo!JAPAN、食べログ、ガイドブックアプリのことりっぷ、iPhone標準アプリの住所録と写真アルバムでの検索ができる。かつて目的地検索はNAVIeliteの弱点の一つだったが、いまやライバルを確実に上回る部分になった。
さっそく、追加されたばかりの新機能であるYahoo!JAPANでの検索を試してみた。フリーキーワードによる検索はもちろん、検索エリアの指定、検索範囲、ジャンル設定もできる。エリアの指定は現在地、目的地、直前に表示していた地図の位置から選択可能だ。じつは、筆者は目的地を中心とした周辺検索機能を切望していたので、Yahoo!JAPANで検索できることより検索エリアとして目的地を選べることのほうが嬉しい。これは賛同してくれる人も多いのではないだろうか。ちなみに、検索エリアの指定はことりっぷや食べログでも可能だ。
目的地を設定したらつぎはルート検索だ。ここはNAVIeliteの真骨頂が発揮されるところで、5ルートを同時検索させてルートを見ながら選択することが可能。しかも、ルート検索が非常に速い。郊外ならともかく、都市部ではどこに行くにもルートが複数あり、しかもそれは距離優先とか直進優先といった単純な条件では選べないことが多い。したがって5ルートから選択できる機能は非常に実用性が高い。