内需喚起でモノづくり守りたい---自工会志賀会長2012年展望

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日本自動車工業会の志賀俊之会長は20日、メディア各社との新年向け会見に応じ、同日から始まったエコカー補助金や2012年度以降も延長されるエコカー減税を「最大限活用して内需喚起に取り組みたい」と表明した。

志賀会長は、こうした国内需要の刺激策は、「円高への根本的な対策」には成り得ないとしたものの、確実に内需拡大につなげ「何としても、日本でのモノづくりを守りたい」と強調した。

---エコカー補助金の復活などを踏まえ、12年の国内新車需要をどう展望していますか。

志賀 今年11年は昨年を14%下回る425万台の見通しだが、東日本大震災の影響を大きく受けた数字だ。12年についてはまだ算定していないものの、エコカー補助金やエコカー減税の延長を最大限活用し、内需の喚起に取り組みたい。

09年度から10年度上期にかけても補助金と減税が同時に実施され、年間ベースで90万台程度の波及効果が見込まれた。12年度からは(補助金と減税の)両方が効いてくるので、相当大きく伸びると期待したい。ただ、前回は消費者の方々に浸透するのに時間を要した。今回は告知やプロモーションを積極的に行って、最初からしっかりスタートを切っていきたい。

生産ベースでは来年も円高の重しがのしかかる。加えて欧州の財政危機の影響もあって現時点で輸出を伸ばすのは難しく、その落ち込み分を国内市場で何とか賄いたい。年初から空洞化の進展に対処できるよう取り組み、生産の拡大を通じてGDP(国内総生産)の拡大に貢献していきたい。

---円高対策として、生産体制の思い切った見直しも止むを得なくなるのではないですか。

志賀 一般的に日本の生産車種を海外にもっていくとか、国内のある生産ラインを閉鎖するといったことがビッグニュースになるが、実際にはそうした大きな事象でないところでも空洞化が進み、日本での生産がどんどん減少している。

たとえば、部品の生産が海外に出ていく、日本で生産する車両の部品を海外製に切り替える、次期モデルから車両ごと海外に移す---、といったことが始まっている。空洞化は、皆さんの想像以上に進んでいる。5年先になって2010年や11年ごろに大きな空洞化が進んでいたのだなと、後悔することになるかもしれない。こうした状況には、自工会会員各社が非常な危機感をもっている。

自動車産業に従事するわれわれは、同時に日本のモノづくりの重要性も認識しており、サプライヤーさんも含めたモノづくりを何としても守っていきたい。それは責務と考えている。

エコカー補助金の復活などは、政府にも国内生産の重要性をご理解いただけた結果だと感謝している。これらは円高への根本的な対策ではなく、守りの姿勢での対策ではあるものの、需要喚起に生かしていきたい。

---日本各社が成長のエンジンとしたい新興諸国では、市場の伸びが鈍化したりマイナスになったりという現象もでています。12年はどう展望していますか。

志賀 国によって異なる部分もあるが、中国全土を見ると、内陸部の投資が引き続き活発な一方、消費の過熱を抑えるための金融引き締めが行われ、政府のコントロールがよく効いている。このため、新車需要ではトラックや商用車が落ちてきた。しかし、乗用車の伸びは7%程度とGDP並みに伸びている。昨年、一昨年のように20%以上ということはないにしろ、GDP並みの成長は期待できる。

他の新興国も、過熱してインフレになると金融引き締めでブレーキをかけるという政策の巡回は同じだ。90年代後半のアジア通貨危機を経験して、各国のマクロ政策はうまく回るようになっている。一時的に需要が低下しても一喜一憂することはなく、中長期的な観点で成長を見つめながら、投資などに取り組んでいくことではないか。

---世界で韓国メーカーとの競争が激化していますが、日本メーカーはどこに強みを見出すべきでしょう。

志賀 これはあくまでも私個人の見解となるが、韓国のメーカーから学ぶところはたくさんある。たとえば欧米で伸びている韓国車のデザインは、われわれがもっと勉強すべき点だし、現地化や工場建設のスピードなどにも学ぶべきところがある。品質やブランド力を引き上げる取り組みでも同様だ。

一方で、われわれも環境や安全面の技術、世界中の事業ネットワークなどの強みをもっている。謙虚に学びながら、そうした強みを伸ばすよう努力していきたい。

《池原照雄》

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