プジョーのデザインはいつも時代の半歩先をいっている。一歩先だと日本のユーザーはついていけないけれど、この『半歩』というところが、ぐっとくる。ワゴンのSWだというのに、このしたたかに放つ色気。ゆるやかな直線なのに間の抜けた感じがしないあたりは、日本車勢が歯軋りして悔しがるくらいだ。
この伸びやかなボディを動かすのは1.6リットルエンジンと6ATの組み合わせ。大丈夫なのか、1.6リットルで? そりゃターボついているけどさ。そんな不安は、アクセルを踏んだ瞬間にスタートラインに置き去りにする。
ちょんと右足が踏み込んだとたんに、ずばっと前に加速するキレのよさ。いや、ターボって踏み込んだあとに仕事はじめるんじゃなかったっけ? そんな考えはすでに石器時代のものと思われるほどの爽快感である。軽い。とにかく、軽い。ビバ、1.6リットルである。ウソだと思うなら、乗ってみそ? そう真顔で伝えたい。そう、この真顔は、国産車やばくてよ、という危機感の真顔だ。
危機感といえば、同胞の『407SW』の方がもっとヤバイかも。この乗り心地、このデザイン、そしてこの価格設定。407に乗っている場合じゃないのである。プジョーって、やっぱり、個人主義のフランスのクルマなのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。