米国マサチューセッツ州を本拠とするスクデリ・グループが「人とくるまのテクノロジー展」に初参加し、開発中のスクデリ・エンジンの概要を披露した。
普通の4ストローク・エンジンと異なり、吸入/圧縮行程と燃焼/排気行程を別々のシリンダーで行う「スプリット・サイクル」がスクデリ・エンジンの第一の特徴だ。吸入/圧縮シリンダーで圧縮された空気はクロスオーバー通路に導かれ、そこで燃料を噴射。その混合気がパワーシリンダーに吸入され、燃焼してピストンを押し下げる。クランクシャフトが1回転するごとに1回燃焼するのでパワーがあり、そのぶんエンジンを小型化できるのがスプリット・サイクルのメリットのひとつだ。
スプリット・サイクルは古くからある技術だが、燃焼効率が悪くて実用化されなかった。スクデリ・エンジンはパワーシリンダーの吸気バルブを外に開く(シリンダー内にではなくクロスオーバー通路側にバルブが動く)ようにすること、そして上死点後に着火することなどで旧来の欠点を解決したという。
さらに、クロスオーバー通路にエアタンクを接続すると、「エア・ハイブリッド」に発展する。減速時や下り坂では吸入/圧縮シリンダーだけを作動させてエアタンクに高圧の空気を充填。加速時や登り坂では吸入/圧縮シリンダーの作動を止め、エアタンクの空気を使ってパワーシリンダーを燃焼させる。ハイブリッドのエネルギー回生を電気から空気に置き換えたようなシステムで、追加するのはエアタンクとそこへの空気の出入りを制御するバルブだけ。バッテリー不要のハイブリッドだ。
日産『セントラ』と比較したコンピューター・シミュレーションでは、セントラのエンジンと同じ出力特性になるように設計したバーチャルなスクデリ・エンジンは35%の燃費改善を達成できる、との結果を得たという。
スクデリ・グループの関係者は「我々のエンジンが実用化されれば、もう従来のエンジンを開発する必要はなくなる。だから、できるだけ多くの自動車メーカーに技術供与したい」と抱負を語る。すでに某メーカー(日本ではないとのこと)と共同研究を始めており、来年には試作エンジンができるが、量産に向けたゴーサインが出るまでに2〜3年、そこから生産化までさらに2〜3年はかかるだろうという。