21年ぶりに全面新設計されたという新型の「FB」型水平対向4気筒2リットルエンジンが『フォレスター』に搭載された。直噴エンジンやアイドリングストップなどの飛び道具なしで、5速MTが15.2km/リットル、4速ATが15.0km/リットルというクラストップの10・15モード燃費を実現できたのは立派だ。
惜しいのは、ATが4速のままであること。スバル商品企画本部・市川和治プロジェクトゼネラルマネージャーは、「リニアトロニック(スバル独自のチェーン式CVT)を積んで燃費性能をさらに上げてアピールしたいという気持ちはありましたが、リニアトロニックは4ATより大きいため、積む場合は車体の床部分を新設計しなければならない。そこで今回は、エンジンだけを刷新したんです」と語る。
新型フォレスターをドライブすると、極低速域では4速ATの変速ステップの広さがややネガティブに感じられる。多段ATに比べ、2速以降にシフトアップするタイミングが明らかに遅いのだ。が、速度が乗ってくるにつれ、そのネガティブな印象は薄れる。エンジンと変速機が直結となるロックアップ状態の領域は4速ATとしてはかなり広く、ダイレクト感は結構高い。
「実は、エンジンのトルクを使えるATのセッティングにできたのは、新型エンジンが素性の良いものに仕上がったおかげなんです」とは、パワートレインのテスターとしてセッティングに携わった車両実験総括部の野田哲夫氏。
「一般に、発進や加速時のトルクの盛り上がりが悪い場合、電子制御スロットルを早く開け、トルクコンバーターのトルク増幅効果を多用してパワー感を演出したりします。しかし、それだとさらにアクセルペダルを踏み増した時に、結局加速が期待値を下回ってしまう。今回のFBエンジンはアクセルを踏み込んでいくときの燃焼がとても良いので、AT側もそのトルクを生かす形でとても素直なセッティングができました」
新型フォレスターのMTとATの10・15モード走行時の燃費差はわずか0.2km/リットル。これは多段型を含めたトルコン式ATとしてはきわめて優秀な値だ。リニアトロニックが欲しいところではあったが、4速ATであることを理由に買い控えるほどのビハインドにはなっていないというのが率直な感想だった。