[BOSEのANC勉強会]車内という難しい環境で実現するまで

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同じ周波数の音を、逆の周期(位相)でぶつけると、音が消える。ANCの原理を理解して、効果を体験させてもらったが、実際にこの技術をクルマの室内に利用するには、様々な課題があったそうだ。

その一つが、クワイエットゾーンと呼ばれる静寂領域の広さに限りがある、ということだ。

ヘッドホンで耳の周囲だけに効果を発揮させるだけなら、比較的容易に実現できても、ドアやダッシュボードにマウントされたスピーカーから、どの席に座った乗員にも同じように快適な環境を実現するのは難しいのである。理論上は、こもり音と呼ばれる100Hz周辺の音では直径30cm程度の広さしか効果を発揮できない。実際にはもっと広い領域を実現できるそうだが、その領域から外れると、元々の雑音が消えないばかりか、増幅されてしまう危険もある。

それを体験できる実験も行なってもらった。アイドリング付近で発生する40Hzの低い音は、マイク(センサー)の位置に関わらず、消音を体験できるが、日産『フーガ』で1800rpmとなる90Hzのノイズはマイクの周囲のみ消音され、実験室内でも位置によって音が大きく聞こえる場合も。2900rpmで発生する145Hzはマイクに頭を近付けても、左右の耳で明らかに消音効果の違いが体感できた。音が高くなるほど、消せる範囲は狭くなるのだ。

二つ目は、そもそもANCはマイクでノイズ(雑音)を拾って、それと逆位相の音をスピーカーから放つことで消音させる仕組みだが、エンジン回転や速度、路面状況などによって雑音が変わるクルマの場合、時間的余裕が非常に少ない。音の波の形さえ同じなら、逆位相でもさらに周期全体をズラすことで演算処理の時間を稼げるが、それも音の変化の大きいクルマの場合限界があるのだ。

この問題は、エンジンからのノイズをエンジン回転数から判断して、逆位相音のフィルターを決め打ちして放つことで解決している。効果を確実にするために誤差を測定するマイクを装備してフィードバックによる補正も加えた、フィードフォワード制御としているのだ。

実際にボーズのANCが搭載されたフーガに試乗させてもらった。走行はせず、停止状態でエンジン回転数を上下させただけだが、それでも効果は体感できた。アイドリング付近のドーンとした音、1800rpmあたりのゴロゴロした音、2900rpm近くのボーっとした音が無くなり、エンジンの雑味が取れてキレイに回っている印象になった。

通常は存在しないオン/オフのスイッチを装着して、作動を切り替えたからこそ違いが分かったが、フーガのオーナーは意識することなく、快適で気持ちのいい加速を楽しんでいるハズ。存在を意識させないハイテク装備。それもある意味凄いことだろう。

《高根英幸》

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