ホンダ『インサイト』のVTECは、全気筒休止のために搭載されている。これによりポンピングロスなしにEVモードでの走行(1km程度)を可能にしているが、『CR-Z』には全気筒休止モードは搭載されていない。
その理由は、ヘッドを出来る限り軽く、シンプルに作る必要があったためだ。バルブも駆動してのEVモードは、技術的には可能だが走行抵抗が大き過ぎて効率が悪いので意味がない。したがってインサイトと違い、EVモードは採用していないそうだ。
ところでCR-Zやインサイトの場合、モーターは駆動アシストのほか、回生ブレーキ以外にも通常の発電機を兼ねているほか、エンジン始動のセルモーターの役割も兼ねている。
だがMTユニットを見ると、セルモーターらしき物体も組み込まれている。訊けば、これはエマージェンシー用のセルモーターなんだとか。リヤに搭載されているIMAモーター用のバッテリーシステムがダウンした場合、エンジン始動も不可能になってしまうのを防ぐために装備されているのだ。
パワートレインの開発を担当した本田技術研究所の細井氏によれば、マイナス20度の極寒地でも信頼性を確保するため、ガソリン車として走行出来るように対策が施されているのだと言う。
実用性を確保しつつ、ハイブリッドのスポーツカーを作る。その実現は、性能面の実現だけではない開発の苦労や配慮の積み重ねだったのである。