初の“FFタイプR”だった「96(年)のインテグラR」を思い出させてくれる乗り味だ。
パキッと鋭いターンインや、スロットルコントロールで自在にスライドを調節できるハンドリングに似たものを感じたのだ。でも乗り心地にセダンのタイプRのようなツラさはなく、バランサーシャフトを装備したエンジンは速いだけでなくなめらかでもある。
5500rpmあたりで突如吼えるという伝統芸はそのままに、体育会系なノリが消え、かなり文化的な乗り物になった。
そしてやっぱり、ボディの魅力にも触れないわけにはいかない。デビューから2年たっても新鮮に見えるのは、フォグランプやドアハンドル、マフラーなどをすべてエッジーに仕立てたディテールのおかげもあるだろう。
純国産のホンダにも、こういった細部へのこだわりを見せてほしいところ。それでいてキャビンは身長170cmの人間なら4人が楽に過ごせるし、ラゲッジスペースは予想以上に深く広い。
『フィット』と同じセンタータンクレイアウトの恩恵で、リアシートが低くフラットに畳めるのもマル。「シビックなのに300万円?」という固定概念から抜け出せる人にとってはいい買い物だと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
森口将之|モータージャーナリスト
試乗会以外でヨーロッパに足を運ぶことも多く、自動車以外を含めた欧州の交通事情にも精通している。雑誌、インターネット、ラジオなどさまざまなメディアで活動中。著書に『クルマ社会のリ・デザイン』(共著)など。