【井元康一郎のビフォーアフター】純EVへの橋渡し、プラグインハイブリッド

2009年10月29日(木) 21時25分
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脱石油ニーズの高まりを受け、EVが注目される昨今だが、バッテリー技術をはじめ、解決に時間のかかる技術的な課題を少なからず抱えているのも事実だ。

東京モーターショー2009では、純EVへの橋渡し役となるクルマが、直前のフランクフルトショーに続いてお目見えした。トヨタ自動車の『プリウス・プラグインハイブリッド・コンセプト』である。

外部電源から車載バッテリーに充電し、そのエネルギーを利用して短距離ならばEVのように走れるプラグインハイブリッドカーは、実はそれほど物珍しいものではなくなりつつある。GMのシボレー『ボルト』をはじめ、世界の多くのメーカーがプラグインハイブリッドカーの試作車を作り、市販計画も公表しているからだ。

が、トヨタのプリウス・プラグインハイブリッドはそれらと一線を画するモデルとなりそうな気配だ。最大の違いは価格である。

開発責任者の田中義和氏は、「プラグインハイブリッドはCO2を25%削減するうえで非常に有効だと確信している。このクルマが世の中に必要と思っていただき、月1万台ほども買っていただけるならば、我々は低価格化に向けていくらでもコスト削減を頑張りますよ」と意気込みを語る。

具体的な数値については明言を避けるが、それでも「プリウスの最上級モデルよりは当然低くしたい」(田中氏)という。プリウスの最高グレードは327万円。プラグインハイブリッド版について、本格発売当初から“300万円切り”を視野に入れていることをうかがわせる。

世界のプラグインハイブリッドカーの試作車の大半は、エンジンを発電のみに使い、その電力を使って電気モーターのみで走るシリーズハイブリッド方式を下敷きにしている。

このシリーズ式の欠点は、市街地ではエネルギー効率を引き上げることができるが、エンジンのパワーを直接使ったほうが効率の良い高速道路や流れの良い一般道では、十分に性能を発揮できなくなる。その状況を回避するには、なるべくエンジンを使わずに走れる距離を伸ばす必要がある。結局バッテリーを普通のEVの3分の1から半分くらい積むことになり、価格が高くなってしまうのだ。

世界の中で低価格シリーズハイブリッドを謳うプロジェクトは、いずれもEV並みの手厚い補助金が頼みである。

それに対して、エンジンを状況に応じて直接動力として使うことができるトヨタ方式のハイブリッドシステムは、バッテリーを使い切った後も相当に良い燃費で走ることができるため、高価なバッテリーを大量に搭載することにあまりこだわる必要がなく、車両価格を抑制しやすい。

EVとして走れる距離は、実用走行で約20kmを想定している。純EVに比べると10分の1程度ではあるが、これでも運転時間にして30分から40分程度EV走行が可能。バッテリーが高性能化し、価格が安くなったときは適宜増やしてやればいいのだ。

ハイブリッド技術でトヨタを必死に追走するホンダもプラグインハイブリッドカーの構想を持っているが、やはりシリーズ方式ではなく、バッテリーの搭載量を抑制できる方式を採用するものとみられている。

エンジンを持たず、バッテリーの電力だけで走る純EVは、長期的には脱石油の本命となることは確実だ。が、バッテリーの性能向上や低価格化、給電インフラの整備など、難しい問題を数多く抱えており、価格も高い。

それに対し、販売価格の上昇をノーマルのプリウスに対して100万円を大きく切るレベルに抑えられるプリウス・プラグインハイブリッドは、経済合理性でクルマを買う一般ユーザー向けに最初から受け入れられる見通しが立つ商品に仕立てられつつあるのだ。

「もちろん我々はEVを否定しているわけではありません。そもそもプラグインハイブリッドはEVと対立しているわけではなく、技術的に共通する部分が多い。また、急速充電器もEVと共用できる規格。価格の安いプラグインハイブリッドが普及することは、インフラの面でも技術の面でも、EVの進化を後押しすることにもつながる」(田中氏)

脱石油は今日、クルマにとって最大のテーマだが、電気エネルギー利用技術の進化やインフラ整備、再生可能エネルギー開発などには長い時間がかかる。また、価格も高く、どういうきっかけを作って普及→量産のサイクルを作っていくかということも難しい問題だ。

プラグインハイブリッドは、そうした理想と現実のギャップを埋め、「卵が先か鶏が先か」という議論をせずにエコカー技術を前進させられるという点で重要な意義を持つテクノロジー。プリウス・プラグインハイブリッドは、価格次第では世界の次世代エコカー技術のトレンドに大きなインパクトを与えることになるだろう。

《井元康一郎》
プリウスPHV(東京モーターショー09)の画像
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