「こうしたエンジンを積むモデルは今の時代にそぐわないのではないか?」という質問に対し、「高効率を目指したテクノロジーは、量販モデル用エンジンでの燃費向上/C02削減技術にも直結する」という回答が即座に帰ってきた。
それが、『X5』『X6』のハイパフォーマンス・バージョンであるMモデルだ。
X6Mのテストドライブを行った場所は米国アトランタ郊外にあるサーキット・コースがメイン。ちなみに、このMモデルを含んだX5/X6シリーズの組み立てを行うのは、そこからクルマで2時間ほどの距離にあるBMWの米国工場だ。
『M』の記号が冠されたモデルといえば、これまでは高回転・高出力型エンジンにMTベースのトランスミッションの組み合わせというパワーパックの搭載が相場と決まっていたが、X6M(とX5M)はそうした“掟”を初めて破ったモデル。『M5』や『M6』に搭載済みの10気筒エンジン+2ペダルMTの搭載も物理的には可能だったというが、こうしたモデルでは重量物(ボートや馬など)の牽引も予想されるので、改めてそれに適したユニットを開発したという。
そんな結果のターボ付き4.4リットルV8エンジンとトルコンATの組み合わせは、しかしそれでも圧倒的な速さを存分に味わわせてくれた。
中でも驚きは、最高で555PSというハイパワーの実現と同時に、680Nmという最大トルクを何と1500rpmという低回転から発してくれる事。なるほど実際のフィーリングもそんなスペックと見事にリンクしていて、アイドリング直後からの強大なトルク感にはビックリするほど。高回転型ではなくてもやっぱり “Mのエンジン”は特別…と感動するのはこんな時だった。
いい気になってサーキットをレーシングスピードで駆け回っていると、やはり最終的にはアンダーステアが気になったりブレーキの耐フェード性が物足りなくも思えたりはしたものの、冷静に考えれば重量2.4トン級、全高1.7m近くという「こんな乗り物」がサーキットスピードで走れる方がどうかしているもの!
確かに、こうしたクルマが大量に世に出回ればそこでは様々な方面に摩擦を与える可能性はあるとは思うが、およそ1500万円という高価格がそんな社会への影響に歯止めを掛けるという事か。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
1985年よりフリーランス活動を開始。自動車専門誌を中心に健筆を振るっているモータージャーナリスト。ワールド・カーオブザイヤー選考委員、インターナショナル・エンジンオブザイヤー選考委員。