評価するべきはオープン時とクローズド時でハンドリングに大きな変化が起きないことだ。
約52kg(乾燥時)といわれるソフトトップを含めた電動式開閉機構(これまでの欧州の主流は油圧式)の重量のほとんどが、ルーフにあるのかリヤラゲッジにあるのかという重量差が発生するのだ。
最近主流のメタルトップに比べてその移動差が小さいこともあるが、これだけきっちりとハンドリングの差をカバーしているところはさすがだ。日本国内仕様はソフトトップにウレタンフォームを追加して静粛性はかなりのものだし、レザーのシート地に直射日光を受けても表面温度が上がりにくい素材を採用するなど、アウディのラグジュアリー志向は見えないところにも及んでいる。
ベースとなったA5に比べて約200kg以上増(車重は1900kg以上)の車重は前述したソフトトップシステムの重量を差し引けば、この剛性感のネタはそこにあったのかと納得できる。
せめてQ5より軽く造ってもらいたかったが。オープンカーは段ボール箱の上蓋を開けたようなものだからワナワナ感やブルンブルン感が残ってしまうものだが、A5カブリオレに関しては見事にそれを打ち消している。ただ、コーナーリングでは最大横Gがかかったときにその重さをはっきりと感じる。駆動配分を最近のアウディの主流となりつつあるスポーティーな方向に振っていても、ときおりアンダーステアーが顔を覗かせるのだ。とはいえ、これはかなりマニアックな視点でのハナシと割り切っていただきたい。
軽量、収納時のスペース効率、改めてソフトトップの良さを見直させてくれた1台だった。欲を言えば、2.0TFSIモデルをラインアップしてもらいたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
松田秀士|レーシングドライバー/モータージャーナリスト/僧侶
スローエイジングという独自の健康法で53歳の現役レーシングドライバー! SUPER GTをランボルギーニ『ガヤルド』で戦っている。INDY500など海外レース経験も豊富で、確かな知識と国際感覚でクルマの評価を行う。2009-2010日本カーオブザイヤー選考委員。