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【中国 次世代トヨタ】攻めと守りのコールセンター

2009年7月14日(火) 01時36分
オペレーター席のパーティションには在席の有無が掲示されている。の画像
オぺレーターの活動内容。コールイン・コールアウトともに顧客との最初の設定を受け持つ重要な役割だ。の画像
右下の緑色のウインドウが、広汽トヨタ独自のCTIである『ICMS(Intelligent Call Management System)』。の画像
コールセンター管理板の前で「コールセンターの活用によって顧客との継続的なコンタクトを維持していくことが重要」と語る黄GM。の画像
広汽トヨタ第一店。1店舗で年間約2500台を売り切る巨大ディーラーだ。の画像

トヨタが中国に導入しているCRM構想「e-CRB(evolutionally-Customer Relationship Building)」。その中核システムとして、顧客獲得・販売支援から、納車後のサポート、アフターサービスや買い換え支援に至るまでの顧客対応を司るのが「i-CROP(intelligent-Customer Relationship Optimization Program)」だ。顧客とi-CROPとの関係のなかで重要な役割を果たすのがコールセンターである。


◆販売後のアフターサポートが顧客満足度を左右する

日本の自動車ディーラーでは、担当セールスマンが納車後のサポートを受け持つが、中国で同様のサポート体制を維持するのはなかなか難しいという。

「セールススタッフは昼間新規来店客の応対のために時間を取られてしまい、既存顧客と接触できる時間帯には電話したくても電話できない。また、業務が終わったあとに疲れている状態でまたこれから電話するぞ、という気にもなかなかなれない」(広汽トヨタ 総経理助理 友山茂樹氏)。

店長としては顧客のアフターこそが重要だと言う。

「購入時だけでなく、販売後のアフターサポートがお客様の満足度を大きく左右します。そのためには、もれなく継続的なコンタクトを維持していくことが重要です」(広汽トヨタ第一店ゼネラルマネージャー黄永江氏)。

そこで広汽トヨタではセールスとアフターの担当を分業化して、アフター部分のフォローをコールセンターに集約させることにした。友山氏はコールセンターを設置する目的を2つ挙げる。

「電話応対専門のスタッフを配置することで、問い合わせの対応を均質化することが1つ。また、クレームの電話を担当外のスタッフが出た場合に対応に困るケースがある。現場で情報の錯綜や混乱を招かないために窓口を一本化する。これが2つめの目的です」(友山氏)。

i-CROPを活用してコールセンタースタッフが定期的な顧客リテンションを行い、サービス工場のさらなる入庫率向上と顧客満足度の向上を実現しているという。


◆月間5000件のコールアウト、4000件のコールイン

取材したのは広汽トヨタ第一店。このディーラーだけで年間約2700台の新車を販売している。コールセンターでは月に5000件のコールアウト(電話発信)と約4000件のコールイン(受信)があるという。このコールセンターの業務について、詳しく見てみよう。

コールセンターでは小売後調査、サービス点検販売、入庫予約確認、保険の継続案内といったコールアウト(顧客への電話発信)を実施している。点検推奨日、保険の満了日など、コールアウトのタイミングなどはi-CROPが顧客の車両情報を元に管理して、オペレーターに指示する。

各オペレーターは、コールアウト業務/コールイン業務/集計・アシスト業務の3つの担当にそれぞれ割り当てられている。それぞれのデスク上に札が置かれ、本日のオペレータの担当業務が掲示され、どのオペレーターがどの業務をおこなっているかが一目で分かるようになっている。

1日でおこなうコールアウトのタスクは i-CROPの画面上にリスト表示され、スタッフはこのタスクリストを順にこなしていく。それぞれのリストをクリックするだけで、コールアウト対象となる顧客とその車両、また最近の活動状況が表示される。開いた顧客詳細画面からコールボタンを押すだけで簡単に電話をかけることが可能だ。

点検の入庫を勧める電話をする場合、予約もPCの画面上でおこなえる。予約ボタンを選択してストール(ピット)の空き状況を確認、空きがあれば予約が可能だ。点検や整備に要する時間は車両と作業の内容によって決められているので、サービスフロントに回すことなくオペレーターで予約の受け付けが可能になるというわけだ。


◆システムはワンオフで構築

次にコールイン。苦情やクレーム、機器の使用方法など、さまざまな問い合わせが飛び込んでくるが、既存の顧客からの電話ならば、画面が赤に変わり顧客名と車種が表示される。もちろん、通話中でも点検・整備の履歴や走行記録が表示された顧客詳細画面を即座に開くことができるため、情報を確認しながら会話できる。

広汽トヨタ第一店のスタッフによれば、「顧客とオペレータの通話はすべて録音され、管理画面から通話記録内容を確認することができます。通話記録は、予約が取れたケース、接触を拒否されたケースなど、活動の結果に応じて検索可能。これによってオペレータと顧客の会話内容を分析し、予約率向上に努めています」という。

このようなコールセンターのシステム(CTI: Computer Telephony Integration)は日本でも一般化しつつあるが、広汽トヨタでは汎用のCTIを流用せず、『ICMS(Intelligent Call Management System)』という独自システムをトヨタメディアサービスの中国の拠点「BTMS」と共にゼロからで構築したという。「汎用コールセンターシステムの流用も考えましたが、カスタマイズの自由度や機能的にこちらの要求に満たないため、自前でつくることにしました」(友山氏)。コールセンターそのものはディーラーが運用するが、システムの導入や教育・研修は広汽トヨタが支援している。

コールセンターの管理担当スタッフも「コールセンターは会社の顔だと思って、これからもお客様に愛されるコールセンターを目指してがんばっていきたい」と責任感をもって仕事をしている。


◆“サービスフォロー”のためのコールセンターが“セールスフォロー”へ

コー ルセンター導入による成果を尋ねた。
「コールセンターが設置されているディーラーでは、定期点検や車検の予約入庫率が非設置ディーラーよりも30%近く高い数字が出ています。点検整備の入庫率が高まれば、ディーラーは販売後のサービスによる収益も確保できるのです」(友山氏)。

店長としてはコールセンターよりも営業スタッフに人員を割きたいのでは?との問いに対しては「コールアウトでお客様に新しいクルマ出ましたよ、と直接伝えることもありますし、チラシにコールセンターの電話番号を記載しておき、お客様から問い合わせが来たときに、そこで新車情報を伝え、セールススタッフに引き継ぐケースもあります」(黃GM)積極的な営業コールがこのディーラーの武器になっていると強調した。

「サービスフォローのためのコールセンターがだんだんセールスフォロー的な役割も持ち始め、営業的にも存在感を増し始めました。今後代替需要が立ち上がってきたときには、コールセンターの重要度はさらに高まるでしょう」(友山氏)

取材時はまもなく現地生産が始まる『ハイランダー』の予約が始まっていた。黃GMは、「カムリの既存顧客に向けコールアウトによるハイランダーの提案をおこなっています。ハイランダーの価格はまだ決まっていませんが、すでに45台を予約受注しています」とコールセンターによるセールスフォローの効果を喜ぶ。

顧客維持という“守り”のためのコールセンターは、コールイン/コールアウト活動を徹底させることで新規顧客の獲得という“攻め”の役割をも担うまでになった。セールスとサポートが一体となった営業活動のあり方は、今後の自動車ディーラービジネスの鍵を握るといえそうだ。

《北島友和》
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