2015年までに乗用車の平均燃費を08年比30%削減するという目標を掲げるマツダ。目標達成のためのコアテクノロジーのひとつ、次世代アイドリングストップシステム「i-STOP(アイストップ)」を実装した試作車に試乗してみた。
アイストップとは、停止したエンジンのシリンダーの中から膨張行程にあるものを検出、そのシリンダーに燃料を噴射して着火させ、スターターモーターの力を併用しながらアイドリング状態に復帰させるというシステム。通常のアイドリングストップ機構が、クランキングである程度回転が上がってからシリンダー内での燃焼が始まるのに比べ、クランク1回転目から爆発が起きるため、アイドリング復帰がきわめてクイックなのが特徴だ。
試乗車は今年半ばに国内市場に投入されるとみられるCセグメントモデル、次期『アクセラ』のAT車。AT車のアイドリングストップは、多板クラッチの油圧保持などの課題があったが、マツダはAT制御用油圧ポンプを電動化することでこの問題を解決している。
走行状態からブレーキを踏んでクルマを停止させると、2秒ほどでスッとアイドリングが止まり、車内は静寂状態に。再始動はブレーキをリリースする、ステアリングを切る、NレンジからDレンジに入れるなど、ドライバーがクルマを走らせようという意思表示と受け取れる動作によって行われる。
エンジンの再始動は「キュキュ!」とスターターモーターのクランク音2回分ほどで素早く行われ、その直後には十分に発進可能な状態になる。アイストップのメリットが最もポジティブに感じられる部分である。マツダによれば、アイドリングへの復帰の目安である500rpmまでの到達時間は0.35秒以下。従来型アイドリングストップがおおむね0.7秒かかるのに比べ、起動時間は半分ですむという。
課題であるATへの実装も、かなり熟成された印象だ。普通のAT車を手動でアイドリングストップさせるた場合、再び走り出すにはNレンジでスターターモーターを回す→セレクターレバーをDレンジに入れる→トルコンやトランスミッション内の多板クラッチが接続状態になってから発進する……、と、かなり煩わしいプロセスを経なければならない。信号が青になるタイミングをちょっと見誤っただけで、後ろからクラクションを鳴らされるハメになる。
アイストップの場合、少なくともそういったストレスとはまったく無縁で、MTのアイドリングストップ車と同じような感覚で走ることができる。
また、AT車ならではという制御上の工夫も多い。たとえば渋滞時にクリープ状態で走っている時は、停止してもすぐに走り始めることが多い。そうしたドライブパターンを考慮し、微低速時に緩やかにブレーキをかけたときにはアイドリングストップしないようにプログラミングされている。
ちなみに、渋滞のなかで停車状態になり、アイドリングストップさせたいという場合は、ドライバーが深くブレーキを踏み込むことによって停止状態であるというコマンドをコンピュータに送ることができる。こうした特徴をユーザーがつかみ、操作のコツを体得するにつれ、アイストップをより有効活用できるようになるという。
混雑した都市部などでは実走燃費で1割ほど燃費をアップさせる効果が期待できるというアイストップ。省エネルギー技術としてはハイブリッドカーが脚光を浴びているが、こうした簡便かつ一定の効果が期待できるシステムの普及も大切なこと。
アイドリングストップがあまりポジティブに受け入れられていない日本市場で、アイストップがそのアレルギーを払拭できるかどうかが注目される。