「クルマ所有を超越したい」…パリのカーシェアリング企業Mobizen設立者に聞く

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Caisse-Commune(ケース・コミューン)、Okigo(オキゴ)と並んでパリでカーシェアリングを展開しているのがMobizen(モビゼン)。10年の実績と他に勝る規模を誇るCaisse-Commune、後発ながら大手レンタカー事業者と組んで規模を急拡大しているOkigoに対して、Mobizenはシンプルでリーズナブルな料金体系と充実のサポートで対抗。車両はすべてメルセデスAクラスで統一している。同社設立者のひとりである、Nicolas Le Douarec氏にインタビューを実施した。

----:Mobizen(モビゼン)設立の経緯は。

Nicolas氏:会社の設立は2007年2月で、4月にサービスを開始した。事業のきっかけは、わたしが(オイルなどの油脂製品を手がける)BPグループで働いていたころに、ロンドンのカーシェアリング事業(BP Carshare)に携わっていたからだ。

----:カーシェアリング事業を始めるにあたってパリを選んだ理由は。

Nicolas氏:パリは人やクルマの密度がとても高く、マイカーを所有しづらい環境といえる。特にパーキング不足の問題は深刻だ。パリでは路上駐車が認められているが、都市部はとにかく駐車スペースがなく、マイカーの場合は駐める場所を探すために時間を無駄にすることが少なくない。しかも有料駐車場は非常に高額。そこで、決まった場所に置いてあるクルマを駐車代ゼロで使えるメリットは魅力ではないかと考えた。カーシェアリングを事業としてやるかとどうかというよりも、ユーザーのメリットをまず考えた結果だ。

----:モビゼンのターゲットと考えるユーザーは。

Nicolas氏:個人客を第一に考えている。実際の会員も8割が個人で、2割が法人だ。法人会員も大企業ではなく、小さい個人企業がほとんど。自動車をステータス表現の手段とみなさない、“前衛的な”考えを持った人が多い。また、彼らは複雑な料金システムは好まず、シンプルな料金体系を望んでいる。頭の中で料金を計算できることが、われわれのサービスの魅力だ。

----:Mobizenの利用料金について教えて欲しい。

Nicolas氏:初回の登録料は不要だが、保証金として150ユーロが必要だ。また、月額料金なしのプランと、月額50ユーロ払う代わりに利用時間ごとの課金を5%ディスカウントするプランを用意している。利用時間と走行距離による課金システムをとっており、1時間あたり9ユーロ、走行距離200kmまでは無料。200kmを超えると0.5ユーロ/kmで追加料金を徴収する。だがこれまでの利用履歴を見ると、200kmを超えた利用例はごくまれだ。もちろん、24時間のサポートや税金、ガソリン代、保険料は利用料金に含まれる。

----:初回登録料や月額基本料を取らないプランを用意した理由は。

Nicolas氏:月1回の利用しかない人は登録料があるというだけで入るのを諦めてしまうからだ。良いか悪いかも分からないものに対して登録料を払わせるのはいかがなものか。

----:車両はどのステーションにも返せるのか。

Nicolas氏:借り出したステーションでの返却が原則だ。すぐに戻るのであればタクシーに比べればはるかに安い。

----:現在のステーション数と今後の増設計画は。

Nicolas氏:現在(9月末)50か所のステーションがあり、近日中に7ステーションが増える。今年の終わりには60ステーションくらいまでに増やす予定だ。

----:ステーションの設置基準はあるのか。

Nicolas氏:パリは小さな街区の集合体になっている。設置場所としては居住地から遠くても500mくらいのところにステーションがあるようにしたいと考えている。ステーションの数よりも、利便性の高いところにどれだけ効率的に配置できるかが重要だ。先ほども言ったが、クルマをステータスシンボルと考えない、自分のクルマにこだわらない人が多く住むところにステーションを設置できれば理想的だ。また、実際に利用してみて、あるいは実際に利用されているのを見て、カーシェアリングがどれだけ便利なものかが分かると思う。

----:ウィークデーと週末の利用回数の割合はどれくらいか。

Nicolas氏:必ずしも利用は週末に集中しているわけではない。半々といったところだ。週末に利用が集中するという状態は好ましくない。ビジネスやレジャーを問わず、多様な用途に対してサービスを提供している。1日で5回も利用される例も珍しくない。

----:Mobizenが目指すカーシェアリングとはどういうものか。

Nicolas氏:ユーザーにすばらしいサービスを提供する、というのが目標だ。車両にメルセデスAクラスを採用して、クルマを使う満足感を与えようと考えた。クルマに乗っていて何か困ったことがあると、ボタンを押すだけで解決できるようなヘルプサービスや、あるいは、事故が起きたときにすぐ自動的に通報したり、行く場所に行けなくて困っているドライバーに対して道を案内するというようなサービスが実現できればと考えている。

----:では最後の質問だが、Mobizenの“zen”は何を意味するのか。やはり日本の「禅」に由来しているのか。

Nicolas氏:その通り。「クルマは所有するもの」という今までの考えを超越したい、という願いと思想がこのサービス名には込められている。

《聞き手:三浦和也 Kazuya Miura 通訳:佐藤純 Jun Sato》

《まとめ・構成 北島友和》

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