レクサス高輪店のマスコミ公開(19日)に際して、さりげなく本邦初公開されたレクサス『SC430』。『ターミネーター3』では「T-X」型女ターミネーターが「いいクルマだな」と言っていただいてしまうレクサスのトランストップ式クーペ&オープンカーだ。
みれば分かることだが日本では現在トヨタ『ソアラ』として現在販売されている。
8月30日のレクサス店デビュー後は、晴れて『SC430』として『GS430』と並んで発売開始されることが発表された。同時にトヨタ『ソアラ』はトヨタ店やトヨペット店からは消滅する。「レクサスは併売しない」(岩月一詞トヨタ副社長)と明言しているとおりだ。
ソアラからSCへの変化は、「バッヂだけではない。レクサスマストと新たに定めた基準をクリアした」(三吉チーフエンジニア)というように、品質面での改良を多く施している。
デザイン面では、前後ライト、グリルなどの変化に限定されるが、機能面では6速ATの採用が大きい。その他、レクサス店舗のソファーと同素材のセミアニリン仕立てレザーやオプティトロンメーターなど高級感を演出する部分の変更を施されている。
しかしSC430は、マイチェンソアラをレクサスと言ってしまったことで新世代レクサスとしてのわかりやすいポイントを、2点外していると筆者は感じた。
ひとつはデザイン。
「新世代のレクサスはL-finesseというデザインテーマを与えました」(平井和平常務役員)
つまり、GSやIS、コンセプトカーの『LF-S』にも共通するファストバック風のシルエットやヘッドライトの水平ラインより低く位置するグリル、アローヘッドと呼ぶ鋭角がぶつかる部分の処理、大きなライン取り、面使いからくる独特の存在感など、彼らがL-finesseと呼ぶデザインエッセンスが、やはり4年前のソアラは最新レクサスとは明らかに違う。
もうひとつは安全。ヘルプネット機能の有無である。
レクサスは日本で唯一のテレマティクス標準装備ブランドである。『G-Link』と名称を変えた『G-BOOK』をベースとしたテレマティクスサービスは、3年間無料で使うことができる。「レクサスオーナーズデスク」と呼ばれる専用コールセンターが用意されるのはレクサスオーナーの特権である。
しかし、G-Linkには二つの仕様が存在してしまうことになった。エアバッグと連動型の(事故を起こしたレクサス車がセンターと自動交信して緊急車両を呼ぶヘルプネットが3年間無料で利用できる)GS、ISのG-Linkと、03年仕様のG-BOOKのプレミアムコールの代わりにレクサスオーナーズデスクを組み合わせたSCのG-Linkである。
レクサスの安全理念を示すのに「ヘルプネット標準装備」はぜひとも欲しかった称号ではなかろうか。
トヨタ『セルシオ』、トヨタ『ハリアー』、トヨタ『ランドクルーザー』など、海外ではレクサスブランドで販売しているのにもかかわらずフルモデルチェンジまで既存のトヨタ店、トヨペット店で継続販売される車種もある。
なぜ、ソアラだけレクサスに移動なのか。アルテッツァ、アリストとともに不人気車ゆえに既存のトヨタ販売店がレクサス行きを望んだのか。
三吉チーフエンジニアのコメントを聞こう。
「たしかにヘルプネットの機能がレクサスラインナップから“一部車種除く”となってしまったのことには忸怩たる思いがあります。エンジニアリング的な問題で無理だったのです。しかし、SCはレクサスの華、“JEWEL OF LEXUS”なのです。いままでレクサスSCはソアラという借の名をつけていたに過ぎない。どうしてもレクサスのショールームにはSCが必要なのです」
筆者はこの言葉に100%納得はできないが、ヘルプネットの全車採用よりも“宝石”を選んだレクサスの判断に、感情に訴えるレクサス販売の真髄を見たような気がした。