『WiLL VS』の価格は175〜205万円と、ベース車で、同じエンジンを積む『カローラ』と比べても、ほとんど価格差がない。月販1500台という、スペシャルな少量生産車にもかかわらず、どうしてこんなに価格を抑えることができたのだろうか?
「ひとつには出来る限りカローラと部品を共有化したためですね。それに、生産工程でもなるべく設備投資をしないようにしているからです。たとえば溶接工程にしても、カローラのように何十億も投資するのではなく、ごくちいさな規模のラインで、小人数で生産を行っているんです。それで、生産を増やす必要があるときには、作業員も臨時で増やす、というスタイルでやっています」
と、VSの開発まとめ役、トヨタ自動車VVC(ヴァーチャルべンチャーカンパニー)プロダクトマネージャーの波多野強志さんは答えた。ちなみに、カローラと多くの部品を共有しているといっても、内外装など、「目で見える部分の部品はすべてオリジナル」だというからすごい。
では次に、『WiLL VS』ではなぜ、『カローラ』のプラットフォームをベースにしたのだろうか? 「最初の『WiLL Vi』が女性向で『ヴィッツ』ベースだったのに対し、VSは男性対象ということで、もう少し大きいクルマをベースにしようということになったんです。とはいっても、プラットフォームというものは『カローラ』から『セリカ』、『ビスタ』まで、基本的にはほとんど共通で、そう何種類もあるわけではないんですね。そこで、いちばん新しい『カローラ』のものを使うことにしたんです」
なおVSの開発は、最初からカローラと同時進行で行われたわけではなく、カローラの開発がある程度進んだ時点から、遅れて始まったものだという。トヨタの少量多品種生産技術、おそるべしである。