ヨーロッパでディーゼル車がブームになっているが、これは環境問題を意識してというより、もっぱら経済的な理由によるものだ。ガソリンと比べてディーゼルの燃費は25%ほど優れているのだが、スイスではディーゼル燃料の価格がガソリンよりも高いために、他のヨーロッパ諸国と事情が異なる。
ディーゼルは以前から燃費のよさは知られていたものの、乗用車では乗り心地(振動・騒音)の悪さから、長距離を頻繁に走るひと向けに、中型車にいくつか設定があるだけだった。それが最近の技術の進歩によりディーゼルエンジンを採用するクルマは増え、フォルクスワーゲン『ルポTDI』のような3リットルカー、オペル『アストラ・エコ4』のような4リットルカーが登場している。ドイツではBMW『7シリーズ』の46%がディーゼルである。
スイスでは、政策によってディーゼル燃料の価格はガソリンより高く設定されているので、ディーゼルの経済的な優位性はなくなる。スイスのディーゼル・ユーザーは、国外へ頻繁に長距離走行するユーザーが主になっている。それでも1990年に2.6%だったディーゼル車の割合は、2000年には7〜8%に成長した。
ただしスイスに限らず、ディーゼルとガソリンとの価格差は縮まる傾向にあり、ディーゼル車の生産にブレーキがかかるだろうというのが、EU業界筋の見方である。